今日は切歯の不正咬合についての記事
切歯の不正咬合は見えやすく、自宅でもすぐにわかるウサギの疾患です。
Contents
ウサギの切歯について
“切歯”とは医学用語じみている言い方で、わかりやすく言うと前歯のことです。
人間での上の真ん中2本の前歯です。
ウサギさんの切歯は実は4本。
前から見える2本の歯の後ろに小さな切歯が2本あります。
これは、小切歯や、ペグティースと呼ばれたりします。
うさぎは齧歯類(げっ歯類)ではないのもこれが関わっています。
この歯があるために、ウサギは重歯目と呼ばれています。
この目にはうさぎしかいません。
また、ウサギの歯は全て歯根が開放しています。(人、犬猫は閉じている)
ウサギの歯は奥歯(臼歯)も含めて、全て伸び続ける常生歯です。
1週間あたり、上の切歯は2mm、下の切歯は2.4mm伸びるといわれています。
乳切歯は胎児のうちに抜け落ちて、乳臼歯は生後7日に生えてきて、生後30日で抜け落ちます。
症状
もちろん、前歯の伸びを確認できれば一番確実です。
しかし、初期の伸びすぎや、上の歯が奥に向かって曲がって伸びている場合は気が付きにくいです。
前歯が伸びているときのウサギさんのよくある行動パターン↓
- 口からぽろっとごはん落とす
- 水がのみにくそう
- 上を向いてご飯を口に入れようとする
- 盲腸便がうまく食べれなくてお尻まわりが汚れる
- 口が開いてる
- 涙目
いくつかは奥歯が悪い時にもみられるので、何かおかしいと思ったら病院で前歯を見てもらいましょう。
原因
切歯の不正咬合が起こる原因とはなんでしょう。
主な3つについて解説します。
① 遺伝が関わる
うさぎさんはたくさんの品種がいますね。
犬も猫も、そしてうさぎもさらに可愛くすることを考えると、顔が短くなるようです。
そうやって品種改良をしていく過程では、必ずしも整合性を持って改良されていくわけではありません。
上顎の骨が下顎より短くなってしまうことがあります。
その場合は、下顎前に出たしゃくれあごのようになり、下の歯が前に出るように伸びてきてしまいます。
この遺伝が関わる不正咬合は、かなり若い時から生じることが多いです。
この不正咬合が起こりやすいウサギの特徴は、体重が1kgほどのネザーランドドワーフ、ロップイヤーなどです。特に純血。
② ケージをかじるなど、外傷性の要因
ウサギ飼いさんのお悩みベスト3のひとつであるケージをかじるなどの歯根への負担を与えることも不正咬合を引き起こします。
ケージから出たくてかじかじ、おやつが欲しくてかじかじ、、、ケージをかじる理由は様々。
割と大きくなった、分別のあるウサギではあまり度を越えて強い力で噛んでいることは少ないようですが、小さいウサギさんは本気でケージを破壊するつもりでありったけの力で噛んで引っ張っています。
特にこの引っ張る行動が不正咬合に直結しやすいと思われます
なので、飼い始めの初期段階で、ケージを噛んでも意味がないことを教えていく必要があります。
なかなか難しいことですが、、、
硬いものを噛むと、歯根へのずれが生じ、かみ合わせが悪くなり、切歯の不正咬合が生じることがあります。
③カルシウム不足などで起こる不正咬合
普通にペレットを食べさせている場合はめったに起きてきません。
しかし、カルシウムの代謝にかかわる病気がある場合もこれに当てはまるかもしれません。
~補足~
上皮小体という骨のカルシウムを溶かしだす内分泌器の機能が亢進してしまうことがあります。(二次性上皮小体機能亢進症。慢性腎臓病に引き続いて起きてきます。)
その場合は、頭の骨が薄くなったり、歯の根元の骨が弱くなってしまい、歯の向きのずれや歯の根元へ向かった過長が起こることがあります。
治療
小さい時の健康診断でその傾向があれば、矯正して改善することもあります。(自宅で前歯を押したり、病院での矯正を目的としたカット)
大きくなってから見つかった子は定期的な前歯のカット処置が必要であることがほとんどです。
清書では1週間で上の歯は2mm、下の歯は2.4mm伸びるとされています。
しかし、実際は年齢、何を食べているか、病気があるかなどで変わってきます。普段不正咬合の子たちを診察していると若い子では、明らかに上記のペースよりも早い子もいます。
病院での前歯のカットは、大体は無麻酔でやってくれることが多いです。
若い時からこの不正咬合があり、定期的な処置通院が難しい場合は抜歯することも検討です。
抜歯は上の4本、下の2本を麻酔をかけて抜きます。
切歯がなくなると、最初はモノを掴みにくくなったりしますが、次第に口唇でモノを掴むことができるようになり適応することが多いです。(なるべく気を付けますが、たまにまた生えてくることもあります。)
ただ、長い牧草などを短く噛み切ることができなくなるため、牧草は適当な長さに切ってあげるようにしましょう。
よくある勘違い~かじり木を噛むことで歯を磨耗する?~
巷では、かじり木を噛むことで歯を摩耗しているというイメージが強いようです。
実は不正咬合の予防にはかじり木は必要ないというのが最近の定説です。
まだよくかじり木が売っているのは、一昔前のかじり木をかじることで歯を磨耗するという考えが残っているからでしょう。
ウサギの前歯は、上と下の歯同士が擦り合わされることで適切な長さに削れていきます。
決して木と歯がすれることで歯が削られるのではありません。
かじり木はどちらかというと、不正咬合の予防というよりはストレス発散や暇つぶし目的です。
かじり木は、ガリガリする時に歯根に負担がかかりやすいため、なるべく柔らかめのものを選びましょう。
予防
不正咬合は予防ができるのか。
生まれつきのものはなかなか難しい。
本当に小さなころに見つけたのであれば、矯正を目的とした切歯のカットや、自宅での圧迫で強制されることもあります。
2次的な不正咬合の予防としては、ケージを噛ませないこと。
また、牧草をしっかり食べることが重要であるといえるでしょう。牧草を食べることで、歯同士の擦れあいが多くなるため、しっかり歯が削れます。
また、牧草を食べると、うさぎさんは切歯の不正咬合だけでなく、臼歯の不正咬合、うっ滞、肥満などの予防につながります。
↓牧草を食べなくてお悩みの場合はこちらへ
牧草はもちろんチモシーの一番刈が理想的ですが、歯の不正咬合を防ぐためであればイネ科牧草であれば柔らかいものでも大差はないと思われます。
チモシー一番刈を選ぶメリットとしては、不正咬合だけでなく、繊維質が豊富であることによりうっ滞予防にもなるためです。
切歯不正咬合から起こる他の疾患
切歯不正咬合があることでさらに生じる疾患もあります。
鼻涙管閉塞
症状としては涙がよく出ます。両目のことも、片目のことも。
鼻涙管は涙を目から鼻に流してくれる管です。
上の切歯の根元は、鼻涙管の近くにあります。
そのため、上の切歯の根元が伸びると、鼻涙管をつぶしてしまうことがあるのです。
そうすると涙は鼻涙管に流れていかないため、あふれ出ます。
その場合は鼻涙管洗浄(※)をしてももう意味はありません。
これから毎日、涙をふいてあげてください。涙焼け対策も。
※鼻涙管洗浄:鼻涙管が炎症産物(見た目はふよふよした白い鼻くそみたいな感じ)で詰まっているだけであれば、ウサギの目頭あたりにある鼻涙孔から細い管を入れて洗い流して、鼻涙管の通りをよくする。
歯根膿瘍
歯の根元に膿瘍が形成されることです。
詳しくは臼歯不正咬合の記事、または単独で後日書きます。
まとめ
ウサギの歯は前歯(切歯)も奥歯(臼歯)もすべて伸びる常生歯。
今が大丈夫だったとしても、いつか歯のトラブルがおこるかもしれないということです。。
切歯不正咬合には主に3つのパターンがありました。
- 遺伝
- 歯根への負担
- 栄養性
より深い話は、なかなかこういったブログに出せなかったりするので、実際に専門家へ聞いてみることがおすすめです
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