【ウサギのその他の骨折】~肋骨・鼻骨・顎骨・骨盤などの注意点と対応~


ウサギの骨折といえば四肢や背骨(椎体)を思い浮かべる飼い主さんが多いかもしれませんが、実は肋骨・鼻骨・顎骨・骨盤など、その他の部位の骨折も少なくありません。

特に、これらの骨折は「見落とされやすい」ことが多く、気づかずに放置されてしまうケースも。

この記事では、これらの骨折の原因・症状・診断・治療について、獣医師目線でわかりやすく解説します。

目次

ウサギの骨折、実はよくある「見落とし」

ウサギは骨がもろく、ちょっとした衝撃でも骨折が起こり得ます。

特に鼻骨や顎骨の骨折は、「症状が目立たない」ことが多く、偶然のX線検査で見つかることも少なくありません。

また、肋骨の骨折は1~2本程度であれば症状が出にくく、見逃されることもあります。

見落とされがちな骨折

  • 鼻骨・顎骨の骨折
    軽度の場合は見た目に変化がほとんどなく、よだれや食欲不振といった「歯の問題」と勘違いされることもあります。偶然レントゲン検査で見つかることも少なくありません。
  • 肋骨の骨折
    1~2本程度の骨折では無症状なことも多く、呼吸の異常が出るまで気づかれないケースも。隠れた外傷として注意が必要です。

【原因】なぜ「その他の骨折」が起こるのか?

ウサギの鼻・顎・肋骨・骨盤などの骨折は、以下のような原因でよく見られます。

骨折の原因

  • 鼻骨・顎骨
     ・ケージに顔や歯を挟む
      → 給水ボトルや金網に歯をひっかけてしまい、慌てて動いて骨折するケースがあります。
     ・高いところから落下し、顔面を強打
      → ソファやベッドからのジャンプ失敗、飼い主の膝からの滑落が典型例です。
  • 骨盤
     ・飼い主やほかのペットに踏まれる
      → 小型犬や猫が同居している場合、意図せずウサギを踏んでしまう事故が発生します。
     ・ドアや家具に挟まれる
      → 部屋んぽ中、ウサギがドアの隙間に入り込み、閉めた拍子に挟まれることがあります。
     ・高所からの落下
      → 高さがあればケージの天井からの落下でも骨盤骨折は起こります。
  • 肋骨
     ・強い圧迫を受ける
      → 誤って座ってしまったり、掃除中に物を落とすと肋骨が折れることがあります。
     ・転倒による衝撃
      → パニックで暴れた拍子に、狭い場所でぶつかり骨折することもあります。

【症状】こんな変化は骨折のサインかも

部位ごとに骨折の症状は異なります。ささいな違和感も見逃さず、観察しましょう。

鼻骨・顎骨

鼻骨・顎骨の骨折の症状

  • 顔の変形 → 正面から見ると左右差が出たり、鼻が曲がって見えることがあります。
  • よだれ → 口の痛みや噛み合わせのズレが原因で、よだれが増えることがあります。
  • 鼻血 → 鼻骨の骨折では鼻からの出血がみられる場合があります。
  • 異常な鼻音(ヒューヒュー、ズーズー音)→ 鼻の通り道が狭くなり、呼吸音が変わります。
  • ごはんを食べづらそうにする(顎骨の場合)→ 牧草を噛み切れず、ペレットもポロポロこぼすことがあります。

骨盤

腰を落とす姿勢や軽度の跛行(足を引きずる)。寛骨臼を巻き込んでいる場合は重度の跛行が出ることも。

骨盤骨折の症状

  • 腰を落としたような姿勢 → じっと座ったまま動かず、トイレにも行かなくなることがあります。
  • 軽度の跛行(足を引きずる)→ 歩くときに片方の後肢をかばうような仕草が見られます。
  • 寛骨臼まで損傷が及ぶ場合 → 後肢がほとんど使えなくなり、重度の跛行や麻痺のような状態が出ることも。

肋骨

重度のケースでは呼吸の異常や胸郭の動揺がみられることも。

肋骨骨折の症状

  • 軽度なら無症状のことも → 気づかずに生活していることも少なくありません。
  • 重度の場合、呼吸の異常や胸郭の動きの乱れ → 息が浅く早くなったり、胸の動きが左右で違う場合は重度の骨折の可能性があります。

【診断】レントゲンだけじゃ不十分な場合も

X線検査である程度確認できますが、鼻や骨盤は構造が複雑なため、斜位撮影やCT検査がより有効です。骨折部の正確な評価が重要です。

CT検査では、骨折の状態やズレの程度、骨片の位置まで詳細に確認できるため、治療方針を立てるうえで非常に役立ちます。

治療は「温存療法」が基本

犬や猫のように積極的な外科手術が難しいウサギでは、以下のような治療が選択されます。

基本的な治療法

  • 痛みの管理
    • 鎮痛剤や炎症を抑える薬を使い、苦痛を最小限にします。
  • ケージレスト(安静)
    • 狭めのケージで安静を保ち、不要な動きを制限します。床材も柔らかめにするのが安心です。
  • 補助給餌・水分補給
    • 顎骨や鼻骨骨折で食事が難しい場合は、シリンジでの給餌が必要になることもあります。
  • 顎骨のズレによる不正咬合のケア
    • 噛み合わせがずれた場合、今後の歯の伸び方に注意が必要です。歯の定期カットや食生活の工夫が必要になることもあります。

骨盤の骨折も多くは保存療法で対応可能で、QOL(生活の質)を大きく損なわずに回復するケースが多いです。

【まとめ】気づきにくい骨折にも要注意

「なんとなく元気がない」「片方だけ足を引きずる」「顔の形が少し変?」…そんなちょっとした変化でも、実は骨折が潜んでいる可能性があります。

サギの骨折は、見逃されると痛みや不調が長引くだけでなく、後遺症を残すことも。気になる症状があれば、早めに動物病院で検査を受けましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事が、少しでもあなたとウサギさんの

生活に役立てば幸いです。
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獣医師 たけちよ

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この記事を書いた人

たけちよのアバター たけちよ うさぎ系獣医師

〇エキゾチック専門獣医

うさぎの世界をおしえてくれたのは歴代うさぎの「白雪」。今は3匹のうさぎたちーーーもふ、ゆきひめ、ちゃちゃまると暮らしています。
兎年に生まれ、兎年に獣医師になり、「うさぎの知識や経験を生かして、幸せなうさぎライフを応援する」ことをVisionに日々活動している、うさぎオタクです。

自分たちより先に旅立つ小さなモフモフたちに、最期のときにはありがとうって言える付き合い方を、うさ飼い全員で目指せたら――それが私の願いです。

飼い主さんのお話を聞くのが大好きです。ちょっとした疑問や小さな気づきでも、遠慮なく話しかけてくださいね。

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