【ウサギの椎体骨折 Part2】歩けない、排尿できない…飼い主が知るべき神経麻痺のサインとケア

ウサギは繊細で骨折しやすい体の構造を持っています。

なかでも「椎体(背骨)の骨折」は、骨の損傷だけでなく神経系に深刻な影響を及ぼすことがあり、命に関わることも少なくありません。

この記事では、ウサギの椎体骨折などにともなう神経症状に焦点を当て、その特徴や対応策、介護のポイントについて解説します。

椎体骨折についてはこちらを参照↓

目次

なぜ椎体骨折で神経症状が出るのか?

ウサギの背骨(脊椎)は、脳からつながる脊髄神経を守るトンネルのような構造をしています。

背骨(脊椎)は、首から腰、お尻にかけて「頸椎」「胸椎」「腰椎」「仙骨」「尾骨」という部分に分かれています

ウサギの背骨を構成するひとつひとつの骨が椎骨。ワッカの構造になっており、その中を太い神経(脊髄)が通ります。

骨折や脱臼によってこの構造が乱れると、脊髄が圧迫・損傷され、神経麻痺が起こることがあります。

特にウサギで折れやすい腰椎(L6〜L7)付近の骨折は、後肢の運動や排泄を司る神経が集中しており、重篤な神経症状を招きやすいポイントです。

神経症状のチェックリスト

以下のような症状が見られた場合、脊髄の障害の可能性があります。

脊髄障害のよくみられる症状

  • 後肢のふらつき、または完全に動かない
  • 後肢を引きずって前肢だけで移動する
  • 尿が出ない、または垂れ流しのようになる(排尿障害)
  • 便の出が悪い、または無意識に排便してしまう(排便障害)

障害が長く続いた場合…

  • 自分の後ろ足をかじる(感覚異常や自傷
  • 下半身の筋肉が痩せてきた(筋萎縮

神経麻痺の治療とサポート

神経の回復は時間がかかり、完全な治癒が望めないケースもあります。

治療の目標は「QOL(生活の質)の向上」「介護負担の軽減」です。

治療・管理の基本

必要となる治療と日ごろのケア

  • 安静(ケージレスト)
    • さらに悪化しないよう、動きを制限します。
    • 特に骨折が原因となる麻痺の場合は骨の動きが固まるまでしっかり守りましょう
  • お薬や点滴での治療
    • 鎮痛薬や神経保護薬の投与(ビタミンB群、ステロイドなど)
  • 圧迫排尿の補助
    • 尿が自力で出せない場合、飼い主さんが排尿を手伝ってあげる必要があります。
  • 清潔管理
    • 頻繁にお尻回りなどをふいたり洗ったりしてあげる必要があります。尿失禁でぬれた状態が長く続いていると皮膚炎や褥瘡(床ずれ)の原因になります。

神経障害のウサギとの暮らし方:介護のコツ

排尿・排便のケア

圧迫排尿は1日数回必要。

なかなか慣れないうちは結構難しいので、最初は病院に数回通ってもらってやり方をお伝えしています。

お尻周りはこまめに拭いて清潔に。専用のおしり拭きや水をはじくワセリンのクリームなどが役立ちます。

床ずれ対策

柔らかいマットやタオルでクッション性を高め、体の同じ部位に圧がかからないようにしましょう。

このバスマットがおすすめで、私の病院でもこちらを使用しています。にょろにょろの間に、便や尿が落ちてくれて体が汚れにくいです。また、ウサギの60㎝ケージの大きさにもピッタリ

こまめな体位変換(2〜3時間ごと)も効果的です。

食欲管理と栄養

神経障害があると、動けないことによるストレスで食欲が落ちがちです。

障害が重度ではない場合は数日でご飯を食べようとし始めることがほとんどです。

体力消費も激しいため、あまりしっかり食べれていない場合は流動食による補助給餌も行いましょう。

神経は回復する? 予後の見通し

ウサギの神経障害は個体差が非常に大きく、完全回復することもあれば、一生麻痺が残ることもあります。

回復の可能性を高める要素

  • 早期対応:骨折から治療開始までの時間が短い
  • 不全麻痺:損傷が完全断裂でない
  • 若くて体力がある:若い子は修復力も高いので期待したいところ,,,

神経の障害の回復はとてもゆっくりで、基本的には数か月単位でのみまもりが必要になることを念頭に置いておきましょう。

一方、完全麻痺や排尿機能の消失がある場合、予後は厳しいことが多いです。

それでも、介護や生活環境の工夫によって、穏やかに暮らせていることもよくあります。

飼い主ができること

「歩き方がおかしい」「おしっこが出ていない」などの神経障害を疑サインをなるべく早期に見つけましょう。

また、獣医師と相談しながら、介護を続けることです。

しかし、何事も飼い主さんご自身の無理は禁物です。

後肢麻痺のウサギさんと向き合うことは、心も体もとても大変です。
「自分がもっと早く気づいてあげられたら…」
「ちゃんとお世話できているかな…」
そんなふうに悩む飼い主さんも多いです。

でも、誰も最初から完璧にできるわけではありません。

どうか、ご自身を責めすぎずに、できることをひとつずつ、無理せず続けていきましょう。
私たち獣医師も、サポートします。

「大好きな子と、できるだけ長く、穏やかな時間を過ごせるように」
その気持ちが、いちばん大切です。

まとめ

椎体骨折による神経症状は、見た目の骨折よりも深刻なダメージを与えることがあります。

歩けなくなった、排尿できなくなった…そんな症状は、単なるケガではなく神経のSOSかもしれません。

ウサギは自分で不調を訴えることができません。

だからこそ、「おかしいな」と感じたときの気づきと早めの行動が、命を守る大きな一歩になります。

最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事が、少しでもあなたとウサギさんの

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獣医師 たけちよ

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この記事を書いた人

たけちよのアバター たけちよ うさぎ系獣医師

〇エキゾチック専門獣医

うさぎの世界をおしえてくれたのは歴代うさぎの「白雪」。今は3匹のうさぎたちーーーもふ、ゆきひめ、ちゃちゃまると暮らしています。
兎年に生まれ、兎年に獣医師になり、「うさぎの知識や経験を生かして、幸せなうさぎライフを応援する」ことをVisionに日々活動している、うさぎオタクです。

自分たちより先に旅立つ小さなモフモフたちに、最期のときにはありがとうって言える付き合い方を、うさ飼い全員で目指せたら――それが私の願いです。

飼い主さんのお話を聞くのが大好きです。ちょっとした疑問や小さな気づきでも、遠慮なく話しかけてくださいね。

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