【ウサギの麻酔は危険?】飼い主が知っておくべきリスクと安全対策

「ウサギに麻酔をかけるのが不安…」「手術中に目を覚まさないか心配…」

ウサギの飼い主さんにとって、麻酔はとても大きな不安要素ですよね。

たしかに、ウサギはイヌやネコと比べても麻酔による死亡率が高い動物です。

そのため、「麻酔が怖い」「手術が心配」と感じるのは、決して間違いではありません。

ですが、麻酔が怖いと言われる理由や背景をしっかり理解することで、

必要以上に怯えるのではなく、“正しく怖がる”ことが大切です。

正しい知識を持つことで、飼い主としてできる備えも見えてきます。

この記事では、現役ウサギ獣医師である私が、ウサギの麻酔に潜むリスクと、飼い主さんが知っておくべき安全管理のポイントをわかりやすく解説します。

目次

データで見る「ウサギの麻酔リスク」

最新の研究データによると…

手術後18時間以内の死亡率

 イヌ:0.17%、ネコ:0.24%  ウサギ:1.39%

→ウサギは犬猫の6〜7倍死亡リスクが高い!

健康なウサギの麻酔死亡率

0.73%(イヌの14倍)

ウサギの麻酔死亡率は、犬や猫と比べて高いとされています。

ただし、これは過去のデータに基づくものであり、近年は麻酔技術や管理体制が進歩しており、安全性も向上しています。

この数値をどう受け取るかは、飼い主さん一人ひとりの考え方次第。

だからこそ、不安なことは遠慮せずに獣医師に相談することが大切です。

ウサギの麻酔が難しい理由とは?

ウサギは他の動物と比べて、麻酔において特に以下の点で難しさがあります。

① 呼吸器系が弱く、低酸素になりやすい

ウサギは体の構造上、胸腔(肺のあるスペース)が狭く、腹部を圧迫されるとすぐに呼吸が苦しくなります。

とくにネザーランドドワーフや肥満体型の子については注意しています。

さらに、吸入麻酔薬をかがせると、そのにおいに驚いて息を止めてしまうこともあり、30秒〜2分近く無呼吸が続く例もあります。

呼吸を止める場合については、麻酔の器械を調整したり、呼吸をしてもらうように調整します。

② ストレスに弱く、急変しやすい

ウサギはとても臆病な動物で、診察台に乗せられるだけでも過剰にストレスを受けます。

このストレスが、心拍数の急上昇や不整脈、ショック死を引き起こす原因になることもあると言われます。

③ 病気を隠しやすい

見た目が元気に見えても、手術前の検査(レントゲン撮影や血液検査など)で肺疾患や、心疾患が見つかることがあります。

こうした病気は、術中・術後に悪化して、命に関わるケースも。

あらかじめリスクを把握して、手術までに治療できるものは治療をしていきます。

手術前検査で異常が見つかった場合は?

一見健康そうな子でも、手術前にレントゲンや血液検査を実施したときに、異常が見つかることがあります。

その場合、手術をするのか、しないのか……???

答えは、「手術をしない場合のリスクと、手術をする場合のリスクを天秤にかける」です。

手術をしないと助からないような場合は、多めの検査上の異常があるくらいであれば、リスクを負ったうえでも手術をしなければなりません

一方、急いで取る必要がない皮膚のできものや精巣腫瘍など、緊急性の低い手術であれば、手術によるリスクの方が高いと判断される場合には、手術を見送る選択肢もあります。

見極めが難しいこともあるので、獣医さんとしっかり相談して決めましょう。

麻酔を安全に行うために重要なこと

1. 麻酔前の検査を徹底する

特に高齢ウサギでは、心臓・肺・腎臓の検査が大切です。

血液検査やレントゲン検査で、リスク因子が見つかることもあります。

2. 麻酔薬の選択と組み合わせ

最近では「コンビネーション麻酔(バランス麻酔)」が主流です。

一つの麻酔薬だけに頼るのではなく、複数の麻酔薬や方法を少しずつ組み合わせて、全体として安全で安定した麻酔をかけるというやり方です。

たとえば、強い薬をドンと使うのではなく、いくつかの薬をバランスよく使うことで、それぞれの副作用を最小限に抑えつつ、必要な効果を引き出すことができます。

ウサギでは、吸入麻酔だけでなく、ケタミンやメデトミジンなどの注射薬を組み合わせて使用し、全身麻酔のリスクを下げる工夫をしています。

3. 麻酔中・後のモニタリングが命を守る

呼吸・心拍・血圧・体温などを常に監視し、変化があればすぐに対応する体制が必要です。

モニター機器だけでなく、経験豊富なスタッフの目視・聴診も重要です。

飼い主さんがうさぎを守るためにできること

信頼できる病院を選ぶ

ウサギの麻酔経験が豊富な獣医師がいる病院を選びましょう。

麻酔前検査や麻酔方法について丁寧に説明してくれるかどうかも、判断材料になります。

術前に体調管理をしっかり

軽い下痢や食欲不振であっても、麻酔のリスクは高まります。

少しでも体調に不安があるときは、手術日を延期する勇気も大切です。

多くの動物病院では、麻酔をかける前にリスクを見極めるため、血液検査やレントゲンなどの「麻酔前検査」を提示しています。

これらの検査には2万円前後かかることが多く、手術と合わせて出費が重なるのは本当に大変だと思います。

それでも、うさぎは不調を隠しやすい動物です。

実際、検査によって思いがけない異常が見つかり、手術の内容やタイミングを見直すきっかけになることも少なくありません。

費用とのバランスや状況にもよりますが、「やっておいてよかった」と思える場面も正直多い検査です。

また、「ちょっと元気がない気がする」「少しだけ食欲が落ちている」など、どんな小さなことでも、遠慮なく獣医師に伝えてください。

飼い主さんの気づきが、その子の安全につながることもあります。

手術を延期するかどうかは、手術の内容や緊急性によって変わってきます。
命に関わるような場合には、多少体調が悪くても、手術を急ぐほうが安全につながることもあります。

質問・相談を遠慮しない

「本当に麻酔が必要か」「麻酔薬の種類は何か」など、不安や疑問はすべて医師に相談しましょう。

命を預けるのですから、遠慮せず納得いくまで確認することが大切です。

獣医師は、飼い主さんと一緒にその子を守る“チームメイト”です。

一人で抱え込まず、力を合わせて最善の選択をしていきましょう。

まとめ|ウサギの麻酔は“慎重に備えれば安全”

ウサギの麻酔は確かにリスクが高いですが、適切な準備と知識のある医師の管理があれば、安全に行うことができます。

ちなみに私は、エキゾチックアニマル専門の病院で働いており、犬や猫の麻酔と比べる機会が少ないため、「ウサギの麻酔は特別に危険」と感じることはほとんどありません。むしろ、ハムスターやインコなど他の小さな動物と比べると、ウサギの麻酔は比較的安定していて、安全性も高いと感じています。
実際、全く持病のない健康なウサギが、麻酔中に命を落とすようなケースはこれまで経験がありません。

飼い主としてできることは、

  • 体調管理
  • 信頼できる獣医選び
  • 手術や麻酔についてしっかり理解すること


この記事が、ウサギさんと暮らすあなたの不安を少しでも和らげ、その子との暮らしに安心を添えることができたなら嬉しく思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事が、少しでもあなたとウサギさんの

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獣医師 たけちよ

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この記事を書いた人

たけちよのアバター たけちよ うさぎ系獣医師

〇エキゾチック専門獣医

うさぎの世界をおしえてくれたのは歴代うさぎの「白雪」。今は3匹のうさぎたちーーーもふ、ゆきひめ、ちゃちゃまると暮らしています。
兎年に生まれ、兎年に獣医師になり、「うさぎの知識や経験を生かして、幸せなうさぎライフを応援する」ことをVisionに日々活動している、うさぎオタクです。

自分たちより先に旅立つ小さなモフモフたちに、最期のときにはありがとうって言える付き合い方を、うさ飼い全員で目指せたら――それが私の願いです。

飼い主さんのお話を聞くのが大好きです。ちょっとした疑問や小さな気づきでも、遠慮なく話しかけてくださいね。

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