ウサギの骨折で最も多いのは「四肢の骨折」|原因・症状・対処法を獣医師が解説

ウサギは見た目のかわいらしさとは裏腹に、意外と繊細な身体構造を持っています。

特に骨折(こっせつ)はウサギに多く見られる外傷のひとつです。

ウサギの骨折のなかでも最も発生率が高いのが「四肢の骨折」。

本記事では、ウサギの骨折の中でも発生率の高い「四肢の骨折」について、獣医師の視点から原因・症状・治療法、そして飼い主さんにできる予防とケアのポイントまで解説します。

↓↓ウサギの骨の折れやすさ、特徴についてはこちらの記事もどうぞ↓↓

目次

ウサギの骨折で最も多いのは「後ろ足の骨折」

ウサギの骨折のうち、四肢の骨折は全体の6割以上を占めており、特に後肢(後ろ足)の骨折は前肢の2倍以上と多いことがわかっています。

さらに詳しく見ると、脛骨(すねの骨)や橈骨(前腕の骨)などの足先に近い場所での骨折が多く、これらの部位は骨の周囲に筋肉や脂肪が少ないため、「開放骨折(骨が皮膚から露出する骨折)」になりやすいのも特徴です。

骨折の原因|日常のちょっとした事故で起こることも

ウサギの骨折は以下のような身近なアクシデントで起こることが多いです。

主な原因は以下の通り:

  • 抱っこからの落下
  • ケージの段差でジャンプに失敗
  • パニック時に暴れてぶつかる
  • 床が滑りやすくて足を滑らせた etc…

ある調査では、骨折の原因の第一位は人の手からの落下、第二位が高いところからの自発的な落下。これら2つ、落下だけで骨折原因の半分近くを占めるのだとか。

しかし、実際にお話を聞いていると、飼い主さんが気づいていないところや、ケージの中にいたりするだけなのにいつも間にか骨折しているパターンもよく聞きます。

ケージ内にいただけのはずなのに、「いつの間にか骨折してしまっていた」というパターンでは、ケージ内にロフトがあったり、木箱が置いてあることが多いような気がします。

また、中には病的骨折といって、骨の転移を伴う子宮がんや乳腺腫瘍などの病気が原因で骨折が起こるケースもあります。

骨折の症状|「足を浮かせる」「歩かない」は要注意

white and brown rabbits on bed

骨折したウサギには以下のような症状が見られます。

  • 片足を上げて着地しない(跛行)
  • 触ろうとすると嫌がる、痛がる
  • 足が不自然な方向に曲がっている
  • 食欲の低下、元気がない    etc…

骨折直後は動かずにじっとしていることが多く、時間が経つと普段通りに動き出す子が多いです。

人にとっては骨折はものすごい強い痛みがあるイメージですが、ウサギは骨折をしていても食欲や元気さは割とすぐに戻ってくるケースが多いです。

しかし、明らかに足を浮かせていたり歩き方に違和感がある場合は、すぐに病院を受診しましょう。

※足の指など小さな骨折はなかなか症状に気づきにくく、定期検診で偶然古い骨折が見つかることもあります

診断 X線(レントゲン)検査

ウサギの骨折は、外見だけで診断するのが難しいケースもあるのと、治療のためにどの部位がどのように折れているのかを確認するために、X線検査(レントゲン)による診断が欠かせません。

また、明らかに折れている部位以外にも、全身のほかの部位での骨折がないかを確認することも重要です。

骨折の背後に内臓疾患や腫瘍などが隠れている可能性もあるため、特に中高齢のウサギでは全身のチェックを推奨しています。

治療方法|症状に合わせて様々な方法を選択

骨折の治療は、ウサギの年齢や骨の状態、性格や生活環境によって最適な方法が異なります。治療の例をいくつか挙げています。

① ケージレスト・外固定

  • 適応:骨のずれが少ない場合(大腿骨・上腕骨など)
  • 方法:ケージ内で安静に+副木・テーピングで固定
  • 特徴:比較的低負担、軽症であれば自然治癒も

骨の変位が小さい場合や、筋肉に覆われた大腿骨・上腕骨などでは、ケージ内で安静にさせるだけでも自然に治ることがあります。

ただし、前足や後足の先の方(遠位部)では動きやすく再びズレるリスクがあるため、外固定(副木やテーピング)を併用することが多いです。

② 手術(観血的整復)

  • 適応:重度骨折・開放骨折など
  • 方法:ピンやプレートで骨を固定(創外固定+髄内ピンなど)
  • 特徴:しっかり固定され、治癒がきれいになりやすい

重度の骨折や開放骨折の場合は、手術によって骨を金属製のピンやプレートで固定する方法が選ばれます。

髄内ピンと創外固定の併用が有効とされており、割れやすく薄いウサギの骨の特性に適した安定した固定が比較的しやすいです。

しかし、これをウサギで実施できる病院は限られているため、かかりつけで実施困難な場合は、専門の病院を紹介してもらう必要があります。

治療法 実際、何を選択するのがいいの?

治療法の選択として、バンテージの整復と、創外固定のどちらかを選ぶ形になることが多いです。

治療法実施できる病院費用(処置のみ)麻酔きれいに治るか術後管理の大変さ
ケージレストー検査費用のみ×不要しっかりとしたケージレスト。
外固定 (用手で整復してバンテージをまく)3-5万(+術後管理費)〇必要△~〇△ バンテージのずれなどのトラブルはとてもよくおこるので大変。
創外固定(髄内ピンと)△かなり限られる10-15万(+術後管理費)◎必要〇 定期的な通院でずれがないかの確認は必要。

※骨折部位によっては、選択できる治療は限られます。

基本的にこの中では、一番きれいに治る可能性が高いのは創外固定になります。

飲み薬

  • 痛み止め:ほとんどのケースで使用
  • 抗生物質:開放骨折では必須
  • 胃腸の薬:痛みやストレスで食欲が落ちた際に使用リスト

骨折は痛みを伴うため、小さな骨折でもなるべく痛み止めを飲んでもらいます。

骨折の中でも開放骨折については、感染を防ぐために抗生物質が欠かせません。

また、骨折の痛みによって食欲不振が見られる場合などはお腹の動きをサポートする薬などを飲んでもらうこともあります。

飼い主さんにできること~骨折予防と早期発見のポイント

A brown rabbit sitting on gravel near a metal gate with plants visible in the background.

ウサギの骨折は、予防と早期発見が重要です。

 骨折を防ぐために

  • 高い場所に登らせない、ジャンプできないように工夫
  • 滑りにくい床材を使う
  • 抱っこする時は低い位置で、落下しないようおしりをしっかり支える

骨折の治療は、上記に挙げたいずれにおいても、なるべく早ければ早いほど成功率が高くなります。

すでに5日以上経過してしまっていた骨折については、骨の周りの筋肉や靭帯が固まり始めていて、整復しにくかったりすることが多いです。

まとめ 四肢骨折は「よくあるケガ」だからこそ、日々の観察と早めの受診を

ウサギの四肢骨折は珍しいものではなく、飼育環境やちょっとしたアクシデントで起こることがあります。特に後ろ足の骨折は非常に多いため、普段の行動や歩き方のチェックが重要です。

「なんとなく動きがぎこちないかも?」と思ったら、無理に様子を見ずに早めに動物病院を受診することをおすすめします。

骨折が早期に発見・治療されれば、ウサギさんの回復もスムーズです。

大切な家族の健康を守るためにも、正しい知識を持って日々のケアを心がけましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事が、少しでもあなたとウサギさんの

生活に役立てば幸いです。
他にもウサギの飼い方・病気・心理などの情報をブログで発信しています。ご質問やリクエストも大歓迎です!

獣医師 たけちよ

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この記事を書いた人

たけちよのアバター たけちよ うさぎ系獣医師

〇エキゾチック専門獣医

うさぎの世界をおしえてくれたのは歴代うさぎの「白雪」。今は3匹のうさぎたちーーーもふ、ゆきひめ、ちゃちゃまると暮らしています。
兎年に生まれ、兎年に獣医師になり、「うさぎの知識や経験を生かして、幸せなうさぎライフを応援する」ことをVisionに日々活動している、うさぎオタクです。

自分たちより先に旅立つ小さなモフモフたちに、最期のときにはありがとうって言える付き合い方を、うさ飼い全員で目指せたら――それが私の願いです。

飼い主さんのお話を聞くのが大好きです。ちょっとした疑問や小さな気づきでも、遠慮なく話しかけてくださいね。

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