ウサギの椎体骨折とは? 症状・治療・予後まで獣医師が解説

ウサギはその見た目の愛らしさとは裏腹に、骨が非常に繊細な動物です。

特に今回紹介する「椎体(背骨)の骨折」は、ウサギにとって重篤なケガのひとつ。

ウサギのハンドリグでよくおこる事故としても有名です…

この記事では、椎体骨折の原因、症状、診断方法、治療、そして予後について、獣医師の視点から詳しく解説します。

目次

椎体骨折とは?

ウサギの骨は軽くて薄いため、犬や猫に比べて骨折しやすい構造をしています。

特にウサギの背骨(椎体)は、保定時の暴れやジャンプの失敗、落下などによって骨折してしまうことで有名です。

ある研究では、ウサギの骨折のうち約23%が椎体骨折であり、特に腰椎(腰のあたり)での発生が多くみられます。粉砕骨折や脱臼を伴うこともあり、重症化しやすいです。

椎体骨折の症状の特徴

椎体骨折の症状は、骨折の部位や重症度によって大きく異なります。

主に以下のような症状が見られます。

椎体骨折に特徴的な症状

  • 後肢のふらつきや麻痺(不全麻痺または完全麻痺)
  • 後肢を引きずって前肢のみで移動する
  • 排尿困難や尿失禁

そのほか、食欲低下、全身状態の悪化などが見られることがあります。

また、後肢が完全麻痺して感覚がなくなると、後肢を自分でかじる自傷行動につながることもあります。

後肢の麻痺やふらつきが見られる場合は、椎体骨折の可能性があるため、早急に動物病院を受診しましょう。

診断方法

診断方法

  • 身体検査
  • 神経学的検査 
  • レントゲン検査
  • ±CT検査
  • ±MRI検査

完全に骨折している場合は、身体検査である程度の判断ができます。

足の動きや反応を見る検査(神経学的な検査)では、どの程度麻痺が進行しているかを確認します。

骨折をしていることの診断のため、X線検査(レントゲン)を実施します。

骨折部位の形状や脱臼の有無を確認できます。

また、CT検査でより詳細な骨折の状態、MRI検査で脊椎の損傷の状況がわかります。

レントゲンで何も異常が見つからなくても、CT検査で細かな異常が見つかることもあります。

治療とケア

ウサギの椎体骨折は、手術で治すことがとても難しく基本的には内科的な支持療法が中心となります。

椎体骨折の基本的な治療法

  • ケージレスト(安静)
  • 点滴
  • 飲み薬(鎮痛薬、ステロイド、止血剤、ビタミンB群、胃腸運動促進薬など)
  • 圧迫排尿陰部周りのケア
  • 補助給餌など食事の介助

※犬とは異なり、外科手術はあまり推奨されません。ウサギでは骨が細く、薄くいです。

予後とQOL(生活の質)

予後(病状がどのくらい良くなるか)は骨折と麻痺の重症度によって大きく異なります。

麻痺の程度が軽い場合では、根気強い治療で回復することもあります。

神経の修復はかなりゆっくりなので、回復にはかなり時間がかかります。数か月単位のイメージです。

後肢麻痺が残る場合は、介護が必要になります。

脊髄の損傷が重度の場合は、数日〜数週間で死亡することもあります。

椎体骨折の神経症状については、第二弾で詳しく解説する予定です

まとめ

ウサギの椎体骨折について

  • ウサギは骨が非常に繊細で、背骨(椎体)の骨折はよくある重篤なケガの一つ
  • 主な原因は、保定中の暴れ、ジャンプの失敗、落下など
  • 症状としては、後肢の麻痺やふらつき排尿障害などが見られる
  • 診断には身体検査・神経学的検査・レントゲン・CT・MRIなどが用いられる
  • 治療内科療法(安静、点滴、内服、介助)
  • 手術は困難であり、ほとんどの場合は保存療法が選択される
  • 予後は症状の重さにより異なり、軽度であれば回復する可能性も?
  • 回復には数か月単位の時間がかかる。後遺症が残ると介護が必要です

ウサギの椎体骨折は、命に関わる深刻なケガです。予防と早期対応が非常に大切です。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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獣医師 たけちよ

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この記事を書いた人

たけちよのアバター たけちよ うさぎ系獣医師

〇エキゾチック専門獣医

うさぎの世界をおしえてくれたのは歴代うさぎの「白雪」。今は3匹のうさぎたちーーーもふ、ゆきひめ、ちゃちゃまると暮らしています。
兎年に生まれ、兎年に獣医師になり、「うさぎの知識や経験を生かして、幸せなうさぎライフを応援する」ことをVisionに日々活動している、うさぎオタクです。

自分たちより先に旅立つ小さなモフモフたちに、最期のときにはありがとうって言える付き合い方を、うさ飼い全員で目指せたら――それが私の願いです。

飼い主さんのお話を聞くのが大好きです。ちょっとした疑問や小さな気づきでも、遠慮なく話しかけてくださいね。

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