実は、うさぎにも人間でいうエボラ出血熱みたいな、恐ろしい感染症があるんです。
注目なのが、近年日本でたまに発生が報告されている感染症です。
しかもウサギの致死率が80~90%ある危険な感染症。
これについてリサーチしたため紹介します。
その名も、兎出血病。
気になるこの病気の発生状況、感染経路、症状などを中心に解説します。
兎出血病の概要
2020年に農林水産省により名称変更され、「兎ウイルス性出血病
兎出血病」となりました。病気の名前は時ごとの印象の受け方や、誤解が生じるリスクなどを考慮して、検討されて変更されます。
豚コレラ⇒豚熱 などが記憶に新しいかも。
原因はウイルス
兎ウイルス性出血病ウイルス(カリシウイルス科ラゴウイルス属のRabbit Hemorrhagic Disease Virus: RHDV)の感染症です。
日本では、兎出血病は、1998年から「届出伝染病」に指定されています。
これは家畜伝染病予防法にて、獣医師が届け出ることが義務付けられている伝染病です。
家畜伝染病予防法 第二章 家畜の伝染性疾病の発生の予防
第四条 家畜が家畜伝染病以外の伝染性疾病(農林水産省令で定めるものに限る。以下「届出伝染病」という。)にかかり、又はかかつている疑いがあることを発見したときは、当該家畜を診断し、又はその死体を検案した獣医師は、農林水産省令で定める手続に従い、遅滞なく、当該家畜又はその死体の所在地を管轄する都道府県知事にその旨を届け出なければならない。
e-gov
兎ウイルス性出血病は1998年に届出伝染病に指定されたため、1998年から今までの発生状況がしっかり記録されています。
ウサギ特有の届出伝染病
- ウサギ粘液腫
- 兎出血熱
- 野兎病
届出伝染病と法定伝染病
伝染病と聞くと、豚熱や口蹄疫と呼ばれる疾患が発生したときみたいに、殺されてしまうの?というイメージがわくかもしれません。
発生による蔓延を防止するため、殺処分等の強力な措置を講ずる必要があるのが、法定伝染病です。
一方、兎出血熱が含まれる届け出伝染病は法定伝染病のように強力な措置を講ずる必要はないものの、早期に発生を把握し、その被害を防止することが必要な伝染病です。
兎出血熱は今現在(2024年5月時点)は届出伝染病なので、今のところはそういったアグレッシブな対応がとられることはありません。
感染経路
感染経路は、ウイルスの経口、経鼻、経結膜による感染です。
主なものは糞を介した経口感染です。
感染したウサギやその血液、分泌物だけでなく死体との接触でも感染します。
また、食事、飲水、敷物を介した間接的なウイルス伝搬も主要な感染経路です。
また、ハエなどの昆虫による媒介もあります。
つまり、いろいろな経路で感染するようです。なかなかすべてを防ぎきるのは難しいのかもしれません。
こんな恐ろしい感染症が入ってこないことに越したことはありません。
症状は呼吸器と神経系
症状は大きく、甚急性、急性、亜急性の3つに区分されます
甚急性は、感染から12~36時間以内に突然死します。
急性では発熱、沈鬱、食欲低下、排便停止や下痢などの症状や、発作・運動失調など神経症状が現れることも。
最終的には呼吸促迫、血液交じりの鼻水などがみられ、2-3日以内に亡くなります。
亜急性では急性と同じような症状ですが、程度が軽く、耐性を獲得して多くが生き延びます。
慢性例も報告があり、重度な黄疸、食欲不振、元気減少などの症状ですが、発症から1-2週間で死亡します。
ただ、不思議なことに、とても若い5week齢以下のウサギは感染を起こしても、症状が出なかったり軽い症状であることが多いです。
RHDV2では亜急性のことが多いため、RHDV1と比較するっと死亡率は低くなります。→最近の傾向
発生状況
この病気が世界的に最初にみられたのは1984年の中国で、ドイツから輸入したアンゴラ兎に発生しました。
その後、世界的に伝搬し、現在までに南アメリカとアフリカを除く40以上の国に広がっています。
日本での最初の報告は1994年の北海道での発生です。その後1995年に静岡県の観光牧場で大量発生しました。
1998年に届け出伝染病に指定されてから、発生状況の記載があります。
↓は届け出伝染病登録からの発生状況をまとめた表です。
2000年、2002年で発生が見られてからしばらくは見られませんでした。
しかし20年ほどの間隔をあけて、2019~2022年は連続で発生が見られています。
基本的には動物園などでの発生がメインで、一般家庭のウサギが感染した報告は見つかりませんでした。
ちなみに、ほかのウサギの届出伝染病であるウサギ粘液腫、野兎病については近年の届け出はありません。
Next…
このように、悲しいことに兎出血熱は近年報告が多いです。
グローバル化が進む今、これからさらに発生報告が増えることも考えられます。
近日中に、現在の兎出血熱に関する詳細な発生状況リサーチや、ウイルスの型の変異などについて記事をまとめる予定ですので、そちらも併せてどうぞ。
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