ウサギの尿路結石

ウサギさんは、尿の中のカルシウムの量が豊富。ほかの動物とは少し異なるカルシウム代謝機構を持っているのです。

自宅の子でも、ペットシーツに白ぽい粉が残るような尿を見たことがある方もいるかもしれません。

尿中のカルシウムの粒が影響して、尿の通り道(尿路)に結石ができてしまうことがあります。

今回は、ウサギの様々な結石に関する症状、治療、予防について解説します。

目次

尿路結石とは

尿路、つまり尿の通り道に結石ができる疾患です。

結石は、尿中のカルシウム砂の沈殿によるものや、炎症細胞などが結石の核となって凝集することで形成されます。

尿は腎臓で作られ、尿管をとおり、膀胱に溜まります。膀胱に溜められた尿は、尿道を通り排泄されます。

この一連の経路のどこかに石が形成されてしまうのが尿路結石です。

原因

尿路結石の形成には主に、尿中の成分や、尿路の状況などが大きく関わっています。

尿路結石に発生要因としては、

  • 飲水量の不足
  • 尿中カルシウム排泄量が多い
  • 尿路の感染
  • 遺伝

など様々な原因が考えられます。

症状

症状としては、基本的には石により尿路が物理的に閉塞される事が根底にあります。

しかし、どこに結石ができるかにより症状、今後の治療もさまざまです。

結石の場所による違い

①腎結石

尿中のカルシウムの砂が尿管に流れずに、腎臓の尿を溜めるところ(腎杯)にたまりやすいです。粒が時間の経過とともに大きく成長し、腎結石になると考えられます。

腎結石の症状

結石が小さい場合

  • 無症状
  • 尿潜血

結石が大きい場合

  • 腎臓の疼痛(お腹が痛そうな症状)
  • 排尿障害(両側でなければ明らかではない)
  • ストレスによる元気食欲不振
②尿管結石

多くは腎臓結石が尿管に下りてきて発生することが多いです。

腎臓と尿管の間(尿管起始部)と、膀胱への入り口付近で石は停滞しやすいです。

尿管結石

  • 痛み
  • 尿の停滞による水腎症(腎臓ないの尿の圧力が高く、腎臓が水風船のようになってしまう状態)
  • 尿毒症や元気食欲低下
③膀胱結石

膀胱内に結石がある状態です。

ウサギの膀胱結石は球状の石が1個のみ形成されることが多く、複数の石が発生することは稀。

膀胱内で結石が大きく成長すると慢性の膀胱炎を起こすことも。

膀胱結石の症状

  • 無症状(レントゲンなどで偶然見つかることも)
  • 頻尿、排尿障害
  • 排尿痛、ぐったり(膀胱結石が膀胱と尿道の間で詰まった際は尿が出ない→尿道結石と同じような症状)
④尿道結石  最も緊急性の高い結石

尿道結石は、膀胱結石が排尿などをきっかけに、さらに先にある尿道に移動したもの。

石が停滞すると排尿障害が強く見られます。→腎不全になるリスク高

尿道結石の症状

  • 排尿障害(おしっこが出にくい、出ない。何度も出そうとしている)←特徴的
  • 血尿
  • ぐったり(おしっこが出ない状態がしばらく続くと腎不全に発展します。尿毒症)

オスとメスで状況が変わります。

オスは尿道が狭いため小さい石も出にくいのに対し、メスのウサギは尿道が広いため、出てくることもあります。

雄の場合は、尿道がかなり狭いため、膀胱から尿道へ結石が移動した際に、閉塞しやすいです。

雌の場合は、尿道が雄ほどは狭くないため、自然に尿と一緒に出てくることがあります。(大きさによっては閉塞するため注意)

検査

尿路結石の検査

  • レントゲン
  • ±超音波検査
  • ±血液検査

結石を疑う場合はレントゲンを撮ります。結石がある場合は見つかります。(ウサギの結石はほとんど炭酸カルシウムの結石なので白く移ります)

犬猫などは、レントゲンに移らない結石もありますが、ウサギではうつらない結石はほとんどありません。

エコー検査(超音波検査)を実施することも。 

エコー検査では、結石のある場所を確かめたり、結石による腎臓や尿管などへの影響の確認をします

エコー(超音波検査)されるもち。

いい子にエコーの練習台として協力してくれています。

排尿障害が見られる場合や、手術を検討する場合は血液検査を確認しておくのが安心です。

排尿ができず、尿路がパンパンな状態が長く続いた場合、障害を受けやすいのは腎臓です。腎臓が強い障害を受けているかどうかは血液検査でわかります。

結石は症状がないこともあるため、健康診断や他の病気のためのレントゲン検査で偶然発見されることもよくあります。

治療

基本的には手術で石を取り除きます。

しかし、ウサギではある程度大きさのあるものも自然に出てくることがあるので状況次第です。

石が膀胱内を傷つけることで膀胱炎が同時に生じていることもあるため、消炎鎮痛剤、抗生物質、止血剤などを飲んでもらうこともあります。

また、排尿障害に伴い、腎不全を併発してしまっている場合は、輸液療法で治療をしていきます。

予防?

同じ環境で育っていても、結石ができない子はできないし、できる子は繰り返しできる。

つまり、体質が大きく影響していると言えます

しかし、それでも環境的な要因も大きいです。

結石は検査から手術まで実施するとなると、(結石の場所にもよるが)20万ほどかかる。そして本人に対する命のリスクも伴うので、できることなら繰り返したくないところです。

こちらでは結石の形成される原因に基づいて、いくつか予防法をリストアップしました。

①なるべくカルシウムの摂取を少なめに

アルファルファの牧草や、いくつかの野菜(特に小松菜や青梗菜など)はカルシウムを多く含むため、あまりたくさんあげることは推奨しません。

野菜を与えている場合は、水分が多くカルシウムの少ないレタス、ニンジン、ブロッコリー、セロリなどのものに変えましょう。

もちろんカルシウムはウサギの栄養のために必要なものではありますが、必要な量は思っているよりも少ないです。

0.2g/100gが必要とされる量と言われていますが、大体のペレットには0.9〜1.6g/100gですので、ペレットには必要量を上回る量が入っているものなのです。

結石が気になる子はカルシウム量の少ないペレットを選ぶようにしましょう

②水分摂取量を増やす

尿路結石を防ぐには、薄い尿をなるべく多くすることがポイントの一つです。

飲水量を増やす方法↓

・上を向いて飲むタイプのボトルより、お皿型の吸水器からの方が飲水量が増えやすいです。

・冷たい水ではなく、少し温かめのぬるま湯の方が飲水量が上がる傾向です(特に冬場)

・ペレットを水でふやかして与える、水分を多く含む野菜を与える

③運動不足解消

正常でもカルシウムの砂が出てくるウサギさんの膀胱はまるでスノードーム。

ずっとケージの中にいるような運動不足では、カルシウムの砂が膀胱の下にたまったまま。

カルシウムの砂だけ排尿の時にも出ていかずに、圧縮されて石が作られやすいということです。

しっかり運動をして、膀胱内をきちんと撹拌してあげることで、カルシウムの砂を溜めないことが大切です。

④漢方やサプリ

尿路疾患の予防などに効果があるとされるサプリメントや、尿路系に対する漢方薬などを出してくれる病院もあるため、試してみるのも一つかも…❓

まとめ

  • 尿路結石には結石の場所により名称が異なる
  • 検査は基本的にはレントゲン
  • 治療は外科的な摘出が中心
  • 尿が出にくくなると腎臓に大きな負担がかかることもあり、緊急性があるものも、
  • 予防のポイントは、カルシウムを少なく、飲水量上げる、運動をすること
  • 生まれつきの体質も大きく影響する

以上が、ウサギの尿路結石に関するポイントです、

結石は予防もとても大切です。しかしいくら気をつけていても体質が関わっていることも多く、特に結石を繰り返している子については、早期発見が大切です。

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この記事を書いた人

たけちよのアバター たけちよ うさぎ系獣医師

〇エキゾチック専門獣医

うさぎの道をおしえてくれたのは歴代うさぎの白雪。今は3匹のうさぎたち(もふ、ゆきひめ、ちゃちゃまる)と暮らしています。
「うさぎの知識や経験を生かして、幸せなうさぎライフを応援する」ことをVisionに日々生きている、うさぎオタクです。
兎年に生まれ、兎年に獣医師になりました

自分たちより先に旅立つ小さなモフモフに、最期のときにはありがとうって言える付き合い方を、うさ飼い全員で目指したい。

飼い主さんのお話を聞くのが大好きです!ちょっとした疑問や気が付いたことなど遠慮せずどうぞ。

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