この時期(4~5月)はほとんどすべてのウサギさんが、するすると毛が抜けて、診療する私の服は毛だらけになります。
今回はそんな換毛期のシーズンに起こりやすい疾患、No1のうっ滞についてです。
うっ滞はウサギの飼い主さんであれば知らない人はいないほどの有名な疾患で、ウサギさんにとっては危険で命に関わる疾患でもあります。
「うさぎは寂しくて死ぬ」ことはないですが、過去にそう言われていたことには、うっ滞が背景にあったんじゃないか?と私は思います。
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うっ滞とは
健康なウサギでも、ある朝突然、ご飯を食べない、糞をしていない、元気がない、などがみられることです。
昨日まではご飯も全部食べて元気だったのに、今日の朝突然食べなくなった、ということが普通に起こります。
うっ滞というワードがわからない方はもしかすると、“毛球症“というワードを聞いたことがあるかもしれません。
うっ滞と毛球症の違い
以前まではウサギが食欲不振、糞が出ないなどの症状は、毛球症と呼ばれていました。原因がおなかの中の毛玉だと考えられていたからです。しかし「毛球症」はもはや昔のワードとされてきています。
今の考え方としては、ウサギのこのような症状は必ずしも毛玉のせいではないことが多いです。消化管自体の動きの低下が原因ということがようあります。
(うっ滞が換毛期に起こりやすいのは、換毛のために血流の供給が皮膚へ多くなるために消化管の血流が減少するということも言われています。定かではありません。)
なので、最近の主な呼び名はうっ滞となっています。
もちろん本当におなかの中に毛玉が詰まっている毛球症の病態も存在するため、
このようにうっ滞の中に毛球症が存在するようなイメージでしょうか。
うっ滞は病名でなく、症状です
ここでそんな日本語の説明、興味ないんですけどーって思われるかもしれません。
しかし、これは病院にかかるうえで理解しておかないと先生の言ってることがよくわからない…となることがあるので説明させてください。
うっ滞とは、その名も”うっ滞症候群”
うさぎの、ご飯食べない、ウンコでない、元気ないなどの症状をまとめて呼ぶ単語です。
(感覚的には、ご飯食べない→ウンコでない→元気ないの順番が多いかと)
つまり、原因ではないです。
うっ滞の原因は様々(下記で説明します)
原因(ストレスや何らかのきっかけや病気)→症状
このようなイメージ
症状なのか病名なのかということがわかっていないと
よくいろんな病院を回っている飼い主さんで、あっちの先生は胃拡張って病気って言ったのに、ここの先生はうっ滞って言ってて、違うこと言われてるじゃん、、、
となることがあります。
病気の症状で、うっ滞になっている可能性もあるということで、消化管の問題だけでなく他の臓器(肝臓や腎臓や呼吸器など)の病気に伴って生じていることも実際にあります。
うっ滞の原因
うっ滞=毛球症ではなく、うっ滞の中に毛球症が含まれると上記で書きました。
うっ滞の原因としては大きく2つに分けられます。
原因1.毛のつまり 真の毛球症です。
毛玉が消化管内で詰まると、胃拡張になるため注意。
毛玉は主に胃にたまりますが、それが胃からでて十二指腸らへんで詰まりやすいです。(近位十二指腸)
原因2. 消化管運動の抑制
これが一番多いうっ滞の原因です。
おおもとの原因としては、些細なストレス、その他の病気など。
消化管はアセチルコリンという副交感神経、つまりリラックスの神経が働かなければ動けません。
そのため、ストレスや痛みなどでは、アドレナリン(交感神経)が優勢となり、副交感神経が劣性になるときは消化管が動きにくいのです。
動物病院へ連れていきましょう
うっ滞は症状に気が付いたら、病院に連れていくのが早ければ早いほど助かりますし、少ない治療で済みます。
すなわち、家で様子を見ている時間が長ければ長いほど助かりにくい。
いままで病院へ行ったことがなくても愛、うさぎのうっ滞の時だけは行きましょう。
実際に動物病院で何をするのか
検査もするかも
まずは一般の身体検査をしてくれることはもちろん、胃の拡張がないかどうか確認するため、触診を行ってくれると思います。
※胃拡張がある場合は通常のうっ滞とは治療が異なることもあります。
また、消化管の運動が低下することで、腸内細菌のバランスが崩れ、ガスが発生しておなかの中に異常にガスがたまる鼓張症という病態まで悪化することもあります。
そのガスは消化管の粘膜を刺激するため、消化管は粘膜を守るために、ゼリー状の粘液を出します。そのため、悪化したうっ滞では糞の周りにゼリー状のものがついて排出されます。
うっ滞のおおもとの原因は様々です。上記のように、些細なストレスならいいのですが、中にはうっ滞が改善しない子で詳しい検査を行っていくと、他の病気が見つかってくることがあります。
たいていは、まずはスタンダードなうっ滞の治療を行って、改善がない場合にレントゲンや超音波検査などでさらに綿密に検査をしていきます。
病院でのうっ滞への対処
まずは点滴
おなかの動きが悪くなっているので、おなかを動かすお薬の入った点滴をしてくれると思います。
口からいれたお薬は、腸まで行って初めて吸収されます。しかしうっ滞で胃腸の動きが停滞しているときは、お薬を飲んでもなかなか腸まで届かないため、口から飲むお薬が効きにくいです。
そこで、点滴をします。
よく行われる動物の点滴は血管の中に直接入れる人の点滴とは異なります。
背中の皮のたるんだ空間に点滴の液をいれておきます。すると背中に液のたまりができるので、周りの血管が薬と必要な分の水分を取り込んでいくことで、吸収されます。
人間でよく行われる静脈の点滴では、万が一入れすぎるとすぐに心臓に負荷がかかるためとても注意が必要です。一方で皮下の点滴では足りない分の水分をゆっくり吸収していくので、多くはいった場合でも静脈内よりは心臓に負荷がかかりにくいといわれています。
点滴が終わって効果がみられるときは、だいたい4~5時間後にご飯を食べてくれるようになることが多いです。
お薬
多くの病院では内服薬を出してくれると思います。
粉で出されるものが多いでしょう。フルーツジュースや野菜ジュースなどを2倍くらい薄めてお薬を溶かして飲ませます。
こういう時には普段からうさぎさんがシリンジに慣れておいてくれるとありがたいと感じるかも。
おもにおなかを動かしてくれるお薬、食慾増進のお薬が入っています。
それにプラスで、うっ滞の時は胃が荒れていて出血していることも多いため、胃粘膜の保護をする薬や、止血剤も出すことがあります。
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