うさぎの「うっ滞」①換毛期は要注意!|原因・症状・治療まで徹底解説

「最近、うちのうさぎの毛がごっそり抜けるけど大丈夫…?」
春や秋になると、うさぎの被毛が大量に抜ける「換毛期」がやってきます。

この時期(4~5月)は多くのウサギさんが、するすると毛が抜けて、診療する私の服は毛だらけになります。

今回はそんな換毛期のシーズンに起こりやすい疾患、No1のうっ滞についてです。

これは、うさぎ飼いさんなら一度は耳にしたことがあるであろう、非常に危険な消化器トラブルです。

この記事では、うさぎの換毛期の時期・注意すべき症状・正しいケア方法について、獣医師が詳しく解説します。

「うさぎは寂しくて死ぬ」は迷信ですが、実際はうっ滞が進行し、命を落とすケースが背景にあると私は考えています。

目次

うっ滞とは?

「昨日まで元気だったのに、今朝から急にご飯を食べない」「糞が出ていない」「動きが鈍い」


このような突然の体調変化は、消化管うっ滞の代表的な症状です。

「うっ滞って何?」という方でも、「毛球症」という言葉なら聞いたことがあるかもしれません。


ただし、最近の獣医学ではこの「毛球症」という呼び名は少し古いものとされています。

うっ滞と毛球症の違い

以前は、うさぎが食欲不振や便秘になると「毛球症」と診断されることが一般的でした。
これは、毛玉が胃腸に詰まることで不調が起こると考えられていたからです。

しかし現在は、必ずしも毛玉が原因とは限らず、むしろ「腸の動きが低下すること=うっ滞」が根本原因であるケースが多いと分かってきています。

(うっ滞が換毛期に起こりやすいのは、換毛のために血流の供給が皮膚へ多くなるために消化管の血流が減少するということも言われています。定かではありません。)

なので、最近の主な呼び名はうっ滞となっています。

  • 「うっ滞」は症状の総称(食べない、出ない、元気ない)
  • 「毛球症」はうっ滞の原因の一つ

という構図です。

もちろん本当におなかの中に毛玉が詰まっている毛球症の病態も存在するため、

このようにうっ滞の中に毛球症が存在するようなイメージでしょうか。

うさぎのうっ滞の主な原因

うっ滞は「一つの原因」で起こるわけではありません

複数の要因が重なって腸の動きが鈍くなることで、消化管が詰まり、悪化していきます。

ここでは、特に多い原因を紹介します。

原因1.換毛期での被毛の摂取

  • 毛づくろいの際に飲み込んだ毛が、胃腸内に蓄積し、内容物の動きを妨げます。
  • 換毛期は抜け毛が多くなるため、ブラッシング不足が直接的なリスクに。

毛玉が消化管内で詰まると、胃拡張になるため注意。

毛玉は主に胃にたまりますが、それが胃からでて十二指腸あたりで詰まりやすいです。(近位十二指腸)

原因2. 消化管運動の抑制

これが一番多いうっ滞の原因です。

おおもとの原因としては、些細なストレス、その他の病気など。

消化管はアセチルコリンという副交感神経、つまりリラックスの神経が働かなければ動けません。

そのため、ストレスや痛みなどでは、アドレナリン(交感神経)が優勢となり、副交感神経が劣性になるときは消化管が動きにくいのです。

動物病院へ連れていきましょう

うっ滞は症状に気が付いたら、病院に連れていくのが早ければ早いほど助かりますし、少ない治療で済みます。

すなわち、家で様子を見ている時間が長ければ長いほど助かりにくい。

いままで病院へ行ったことがなくても愛うさぎのうっ滞の時だけは行きましょう。

実際に動物病院で何をするのか

うっ滞は、時間との勝負です。以下のような検査・治療が一般的に行われます。

検査

基本の検査について

  • いつから食欲がないのか、うんちは出ているか、痛がっていないかなどを確認
  • ±レントゲンでガスの溜まり方や内容物の停滞を確認
  • ±血液検査 etc…

まずは一般の身体検査をしてくれることはもちろん、胃の拡張がないかどうか確認するため、触診を行っていきます。

※胃の拡張がある場合は通常のうっ滞とは治療が異なることもあります。

鼓張症になることも。

また、消化管の運動が低下することで、腸内細菌のバランスが崩れ、ガスが発生しておなかの中に異常にガスがたまる鼓張症という病態まで悪化することもあります。

そのガスは消化管の粘膜を刺激するため、消化管は粘膜を守るために、ゼリー状の粘液を出します。そのため、悪化したうっ滞では糞の周りにゼリー状のものがついて排出されます。

うっ滞のおおもとの原因は様々です。上記のように、些細なストレスならいいのですが、中にはうっ滞が改善しない子で詳しい検査を行っていくと、他の病気が見つかってくることがあります。

まずはスタンダードなうっ滞の治療を行って、改善がない場合にレントゲンや超音波検査などでさらに綿密に検査をしていくことが多いです。

病院でのうっ滞への対処

点滴・強制給餌(シリンジ)

内科治療について

  • 脱水を改善するため皮下点滴を行います
  • 自力で食べられない子には、流動食をシリンジで与えます

おなかの動きが悪くなっているので、おなかを動かすお薬の入った点滴をしてくれると思います。

口からいれたお薬は、腸まで行って初めて吸収されます。しかしうっ滞で胃腸の動きが停滞しているときは、お薬を飲んでもなかなか腸まで届かないため、口から飲むお薬が効きにくいです。

そこで、点滴をします。

ウサギの皮下点滴について

小さな動物によく行われる点滴は、血管の中に直接入れる人の静脈点滴とは異なります。

背中の皮のたるんだスペースに点滴の液をいれておきます。すると背中に液のたまりができるので、周りの毛細血管が薬と必要な分の水分を取り込んでいくことで、時間をかけて吸収されます。

人間でよく行われる静脈の点滴では、万が一入れすぎるとすぐに心臓に負荷がかかるためとても注意が必要です。

一方で皮下の点滴では足りない分の水分をゆっくり吸収していくので、多く入った場合でも静脈内よりは心臓に負荷がかかりにくいといわれています。

点滴が終わって効果がみられるときは、だいたい4~5時間後にご飯を食べてくれるようになることが多いです。

お薬

自宅での内科治療

  • 「消化管運動促進剤」や「ガスを抜く薬(消泡剤)」を使うこともあります

多くの病院では内服薬を出します。

粉で出されるものが多いでしょう。フルーツジュースや野菜ジュースなどを2倍くらい薄めてお薬を溶かして飲ませます。

こういう時には普段からうさぎさんがシリンジに慣れておいてくれるとありがたいと感じるかも。

おもにおなかを動かしてくれるお薬、食慾増進のお薬が入っています。

それにプラスで、うっ滞の時は胃が荒れていて出血していることも多いため、胃粘膜の保護をする薬や、止血剤も出すことがあります。

原因の除去

うっ滞を引き起こすストレス源として、その他の異常がある場合は、そちらを治療しなければなりません。

自宅でのケアと予防法【獣医師の視点】

うっ滞を防ぐには、日頃の生活管理と観察が何より大切です。

毎日の健康チェック

  • ●のサイズ・数・形は健康のバロメーターです
  • 食欲・行動の変化にすぐ気づけるように。

換毛期は1日1回のブラッシング

  • 特にライオンラビットや長毛種は念入りに
  • お尻や胸まわりなど、毛玉になりやすい部位を重点的に行いましょう
  • 換毛期は毛玉流しのサプリメントもお勧めです。

こちらは嗜好性も高いので自分から飲んでくれる子が多いです。与えすぎには注意です。

良質な牧草と水を十分に与える

  • チモシー1番刈りを中心に与えてください。
  • 水は皿タイプのほうが飲む子もいます
  • ペレットの量も気を付けてください

まとめ|換毛期はうっ滞の時期。日々の観察とケアが命を守るカギ

うっ滞は、放置すると命に関わる緊急疾患です。特に換毛期は、抜け毛の摂取が増えるため、日頃以上に注意が必要です。

以下の症状が見られたら、すぐに動物病院を受診してください:

うっ滞の症状

  • 食欲がない
  • うんちが出ていない
  • うずくまって動かない
  • 呼吸が早い・歯ぎしりをしている

「様子を見よう」は危険です。

早めの受診が、命を救うことにつながります。

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この記事を書いた人

たけちよのアバター たけちよ うさぎ系獣医師

〇エキゾチック専門獣医

うさぎの世界をおしえてくれたのは歴代うさぎの「白雪」。今は3匹のうさぎたちーーーもふ、ゆきひめ、ちゃちゃまると暮らしています。
兎年に生まれ、兎年に獣医師になり、「うさぎの知識や経験を生かして、幸せなうさぎライフを応援する」ことをVisionに日々活動している、うさぎオタクです。

自分たちより先に旅立つ小さなモフモフたちに、最期のときにはありがとうって言える付き合い方を、うさ飼い全員で目指せたら――それが私の願いです。

飼い主さんのお話を聞くのが大好きです。ちょっとした疑問や小さな気づきでも、遠慮なく話しかけてくださいね。

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