うさぎの命にかかわる緊急疾患:急性胃拡張とは?

季節の変わり目や換毛期(春や秋)において起こりやすい、ウサギの超が付くほど救急疾患である胃拡張について。

これは単なるうっ滞ではありません。

うっ滞は、食べない、ウンコでない、ちょっと元気ないなどの症状でウサギ自身は元気そう。こちらも緊急な疾患ですが、胃拡張はそれの更に緊急な状態。

単なるうっ滞では痛みはない様子ですが、胃拡張はかなり痛そうな様子が見られます。

この病気は、胃の出口(幽門)や腸内に毛や糞の塊が詰まることで、胃が急激に膨張し、強い痛みを引き起こします。

たまに、詰まりはなく、消化管が動いていないだけの機能性イレウスという状態でも胃拡張になるようです。

目次

よくみられる胃拡張の症状

まず胃が張っているというのが根底にあるとして、家で気が付きやすい症状がこちらです

急性胃拡張の症状

  • 突然の発症:数時間前まで元気だったうさぎが、急に元気を失い、食欲がなくなります。(お昼まではご飯も食べて普通に元気だったのに、家に帰ってきたら突然、、、ということがよく起こる)
  • 強い腹痛

確かにうさぎは痛みを隠す動物です。しかし胃拡張の時は隠せないような痛みがある様子。

ぐっとおなかをよじって座り込んだり、腰抜けのような姿勢(背弯姿勢)をとったり、普段と違うところで急に横になる、明らかに痛がる様子が見られます。

こんなふうに急に痛くなる疾患としては、他に肝捻転があります。

  • 食欲不振と排便停止

食事を摂らず、便も出なくなります。

  • 脱水している

脱水の判断の仕方は、背中の皮膚を引っ張って伸ばしてみて、手を離すとプルンッと戻るのは脱水がない状態。脱水の時はネバーっとゆっくり戻る。

(本当は血液検査をしないと正確にはわかりません。家でもできる簡易的な確認法としてご紹介。ツルゴールという方法)

胃拡張では、胃より先の腸に水分やご飯が進みません。水分や栄養を吸収するところは腸なので、吸収できず脱水してしまいます。

  • 耳の血管が見えにくい

血圧低下の兆候として、耳の血管が見えにくくなることがあります。

そのうえで、だいぶ危ない状況なものはこちら

特に危ない症状

!体温が下がっている。

体温は耳が一番簡易的なチェックの方法ですが、そこまで正しくないです。より正確に判断するなら口の中に小指を入れてみて。

病院では、肛門から体温計を入れて体温を測ります。

体温が下がっていると予後が悪くなるため、注意が必要です。ヒーターなどでしっかり温めて。背中を蒸気でホットアイマスクなどで温めるのもおすすめ。

!胃が硬い

進行すると胃が硬くなり、触診で確認できます

急性胃拡張が疑われる場合の対応

急性胃拡張は進行が早く、放置すると6〜8時間で命に関わることがあります。うさぎを診察できる動物病院を早急に受診してください。

移動の際は、体温が下がっているようならしっかり温めて。

病院での処置

夜間救急か、ウサギをよく診ている病院かで対応は違うかもしれません。

身体検査:お腹の触診や体温測定を行います。

レントゲン検査:胃の拡張状態を確認します。

点滴治療:脱水を改善し、体液バランスを整えます。

鎮痛剤の投与:強い痛みを和らげるため、適切な鎮痛剤を使用します。

胃内容物の除去:重度の場合、鎮静下でカテーテルを用いて胃内のガスや内容物を除去することがあります。

ここでの注意点としては、よくあるうっ滞で使うおなかを動かすお薬(メトクロプラミド、通称プリンペラン)は注射としてはあまり使わないのですが、口から飲むのは問題ありません。

詰まっている状態でおなかを動かしてしまうとただ痛いだけなので、まずは何よりも痛みをとることです。

 自宅でのケアと予防

  • 体温管理:体温が低下している場合は、ヒーターや温かいタオルで体を温めてください。
  • マッサージ:点滴後、背中やお腹を優しくマッサージすることで、血行を促進します。
  • 流動食の給餌:水分を多く含んだ流動食を与え、消化管の動きをサポートします。
  • 薬の投与:獣医師の指示に従い、必要な薬を適切に投与してください。

循環が悪くなっていてお薬が吸収されにくいことがあるので、点滴を打った背中をマッサージしてあげてください。おなかの動きをサポートするようにおなかも優しくマッサージ。

背中を温めるのも◎

ウサギのケージに入れるヒーターなどは、夏以外は必須かもしれません。

ウサギの様子に合わせて温める。

東洋医学的には、カイロよりも、煙の出ないお灸みたいなものや、ホットアイマスクなどがいいみたい。

濡れタオルをレンジで10秒くらいチンして気持ちいいくらいの温度にしたものも使えます。

病院で触ってもらって、胃の拡張が取れてきたら、ご飯を入れていきます。さらに、今度はおなかを動かしていく必要があるので、おなかを動かすお薬、食欲増進のお薬などを飲ませていきます。

おなかが硬くなるのは困るので、あまりお水を飲まないときは、水を多めに含ませた流動食を食べさせます。

基本はペレットをくだいたものか、ライフケアなどの粉の流動食、5gに対して、水を10~12mlいれてちょうどいい硬さです。おなかを柔らかくする目的ではもう少しお水を足していきます。

↑は、ペースト状で、角が立つくらいの硬さ。

胃が硬くて、胃を柔らかくする目的では水を多めにしていきます。

または、ペレットの粉は入れずに野菜ジュース(これ一本で1日分の野菜とか)だけでも大丈夫です。

脱水などがあると、消化管の粘膜がべたついてしまって流れにくい状態なので、腸の流れをよくする油のお薬ラキサトーンなども加えます。

お薬、ラキサトーン、様子をみて流動食、マッサージなどでケアをしていき、普段通りの調子に戻るまで続けていきます。

治療後

回復してすぐにまた様子がおかしくなることがあるので、注意してあげてください。

1度胃拡張になると消化管の機能が落ちるので、この先もうっ滞や胃拡張になりやすい傾向です。引き続き、調子が悪くなったときには、より早く気づきましょう。

予防策

  • 食事管理:高繊維質の牧草を中心に、バランスの取れた食事を心がけましょう。
  • ストレスの軽減:環境の変化や騒音を避け、うさぎが安心できる環境を整えます。
  • 定期的な健康チェック:日頃からうさぎの健康状態を観察し、異変があれば早めに対応します。

まとめ

急性胃拡張は、うさぎにとって非常に危険な疾患です。

早期発見と迅速な対応が命を救う鍵となります。

日頃からうさぎの様子をよく観察し、異常を感じたらすぐに専門の動物病院を受診してください。

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この記事を書いた人

たけちよのアバター たけちよ うさぎ系獣医師

〇エキゾチック専門獣医

うさぎの世界をおしえてくれたのは歴代うさぎの「白雪」。今は3匹のうさぎたちーーーもふ、ゆきひめ、ちゃちゃまると暮らしています。
兎年に生まれ、兎年に獣医師になり、「うさぎの知識や経験を生かして、幸せなうさぎライフを応援する」ことをVisionに日々活動している、うさぎオタクです。

自分たちより先に旅立つ小さなモフモフたちに、最期のときにはありがとうって言える付き合い方を、うさ飼い全員で目指せたら――それが私の願いです。

飼い主さんのお話を聞くのが大好きです。ちょっとした疑問や小さな気づきでも、遠慮なく話しかけてくださいね。

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