うさぎは草食動物であるがゆえに、消化管うっ滞(うったい)は非常に起こりやすい疾患のひとつです。
中でもうさぎのうっ滞は、緊急性の高い症状であるため、飼い主さんの知識と日頃の備えがとても重要です。
「うっ滞って予防できるの?」とよく聞かれますが、正直なところ予防できるケースもあれば、どうしても避けられないケースもあります。
ただし、原因に合わせた対策をすることで、うっ滞のリスクを減らすことは可能です。
本記事では、「うっ滞になる前にできること」をテーマに、日常ケアで意識しておきたいポイントをご紹介します。
しかし、予防はしてもしきれないものなので、うっ滞に関しては即病院へ!と思っておいてください。
※「うっ滞とは何か?」「症状や診断」などの基本について知りたい方は、こちらの関連記事もあわせてご覧ください。

Contents
うっ滞の原因別・予防対策
消化管うっ滞には主に以下のような原因があります:
- 毛が詰まる(毛球症)
- ストレスによる消化管運動の低下
- 換毛期前後の体調変化
の3つが挙げられます。
それぞれの原因に対して、具体的な予防策を紹介していきます。
1. 毛球症(毛のつまり)によるうっ滞の対策
うっ滞の予防をすると考えると、とりあえずは毛玉がつまらないようにすることを考えます。
いわゆる毛球症の対策ですね。
毛球症は、時には重篤なうっ滞である急性胃拡張という病態を引き起こすこともあるため、軽く見てはいけません。
急性胃拡張は一言で言うと、胃で形成された毛球が詰まって閉塞すること。ウサギは吐けないし、胃が張るととても痛い。
↓急性胃拡張についてはこちら。

食事面の対策
牧草中心の食生活は、うさぎの腸内環境と消化管運動を保つための基本中の基本です。
ウサギを飼っている人なら99%の人が知っていることですね。
繊維質を多く含む牧草は、胃や腸の動きを活発にし、体内の毛を絡めとって排出しやすくしてくれます。
牧草をたくさん食べてもらうための工夫:
- ペレットや野菜の量を見直す
- 食事の順番を工夫する
- うさぎの好みに合う牧草を見つける
- おやつの与え方を調整する
※このあたりは奥が深いため、別記事で詳しく解説予定です。
サプリメントの活用

毛玉対策用のサプリメントは、毛球症予防の補助的手段として役立ちます。
ラキサトーン / ヘアボールリリーフなど
油分を主体とした製品で、毛をスムーズに排出するサポートをしてくれます。
多くのうさぎが好んで口にすることが多いですが、甘いものが苦手な子には不向きな場合も。
ラキサトーンに関しては、繋がり便が出る子や、毛玉のつまりを疑ううっ滞があった子に病院で処方していますので相談してください✨
ラキサトーンとヘアボールリリーフの違い⇒
- ラキサトーンは鉱物性油脂のため体に吸収されにくく、太りにくい。
- ヘアボールリリーフは植物性油脂なので、太りやすいという点に注意
パパイヤのドライフルーツ

パパイヤに、毛を溶かす効果があるかどうかは定かではありません。(おそらくなさそうです)
しかしその中に含まれる酵素が毛同士の“つなぎ”を分解する可能性はあります。
科学的根拠は少ないものの、「気休め程度」には◎
獣医師の立場としては自信をもっておすすめはできませんが、おやつとしたらいいかも
アクティブEなどその他サプリメント
効果のエビデンスは不明ですが、おやつ感覚であげられるものも多いです。
ただし、甘すぎるものや炭水化物が多い製品は要注意。人間が食べて「甘っ!」と思うものは控えめに。
うさぎのおやつについてはこちらの記事も参考にしてみてください。

グルーミング(ブラッシング)
換毛期は毎日グルーミングをしてあげてください。
野生のウサギはよく動くため、換毛のときは浮いた毛が出てきても、風で飛ばされたり、草木にくっつくため自然と体から抜け落ちます。
しかし、ほとんどを室内で暮らすうさぎは、毛を自分でなめ取ってしまいます。これが毛球の原因に。
換毛期にやってあげたいこと
- 換毛期はできれば毎日ブラッシング
- 難しければ、なでているときに抜け毛を指で抜いてあげるだけでもOK
- 「毛を取ってあげよう」という意識が大切です
ストレスによるうっ滞の対策
消化管の動きは、自律神経のバランスに左右されます。
リラックス時に働く、副交感神経が活性化されている状態=腸が元気に動く状態です。
つまり、ストレス=消化管の動きが鈍くなるということ。
じゃあ、ストレスゼロを目指すべき?
実はそうでもありません。
「ストレス=悪」と決めつけず、うまく付き合うことが大切です。
心理学者ハンス・セリエ博士も「ストレスは人生のスパイス」と語っており、適度なストレスは成長や抵抗力の向上につながるとも言われています。
人にとって、ストレスがたまった状態が長く続くと、心身に影響が及んで病気になったり、最悪の場合は生命を脅かすこともあります。
では、ストレスが全くなくなれば、私たち人間は、健康で快適な生活を送ることができるのか?実は、必ずしもそうではいですよね。
「ストレス=悪者」と捉えられがちですが、適度なストレスは、体の抵抗力を高めたり、心の成長を促してくれるのです。それに、ストレスの全くない人生は砂漠のような何もない人生になるかもしれません。
過保護になりすぎると、うさぎ自身が環境の変化に対応できず、逆にストレスに弱い子に育ってしまうことも。
もちろん、”いつもと同じ”はウサギさんにとって平穏で幸せでもあります。
しかし、たまには適度な変化やちょっとしたお出かけに慣らしていくことも、ストレス耐性を高めて打たれ強いウサギに育てていくポイントです。
換毛期前後は特に注意!
換毛期の前後は、うっ滞の発症リスクが高まります。
皮膚の色がピンクから毛色っぽく変わってきたら、換毛期が近いサイン。
↑アルビノや、白い毛の子はわかりにくいです。多くの場合は左右対称に皮膚の色の変化がみられます。
• 食欲が落ちていないか
• うんちのサイズや量が減っていないか
このような変化をこまめにチェックしましょう。
原因としては、換毛のため、皮膚に血流が集中することで、消化管への血流が減り、腸の動きが鈍くなるのでは?という説もあります。
換毛期前後は、エネルギー消費が増えるので、体重が落ちそうな場合はペレットの量を一時的に増やすのも検討してください。
まとめ うっ滞の予防には「意識」と「備え」が大事
今回は、うっ滞の原因別にできる対策を紹介しました。
原因別対策
- 毛球症対策には食事・サプリ・グルーミング
- ストレスと上手に付き合う工夫
- •換毛期前後の体調管理
何も対策してなくてもうっ滞にならない子もいれば、対策しているのにうっ滞になるときはなる!
予防に終わりなんてないんです。(予防医療の闇でもある)
だからこそ、「あれ?ちょっと様子がおかしいな」と思ったら、すぐに動物病院へ。
うっ滞は早期発見・早期対応が命を守ります。
• 本兎の負担も少なく
• 治療費も抑えられて
• 回復も早い!
うさぎの健康を守るために、普段から備えておきましょうね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
獣医師 たけちよ
この記事が、少しでもあなたとウサギさんの
生活に役立てば幸いです。
他にもウサギの飼い方・病気・心理などの情報をブログで発信しています。
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