メスうさぎの子宮疾患 ~ウサギの子宮はがんになる~

ウサギさんの女の子は、子宮疾患になりやすく、今では「避妊手術をして予防をしましょう」という考えが一般的ですね。

しかし、ウサギさんの子宮事情は実際どうなのか。

命にかかわるリスクがあることなので、できることなら手術はしたくないという考えも十分理解できます。

でも、ぼんやりとしたリスクを頭の隅におきながら、その選択を後回しにしてはいけませんよ。

うちの子のこれからを考えるにあたって、まずは、知っておくこと

今日の記事は、ウサギに避妊手術をするかどうか迷いつつもなかなか考えがまとまらない方の手助けになってくれたらいいな、と思って書きました。

女の子のウサギの子宮疾患について掘り下げます。

目次

ウサギの子宮について

構造

子宮の形は動物種によって異なります。

ウサギの子宮は、重複子宮という形の子宮です。

”重複”というのは、外子宮口(図を参照)が2つあるということです。

ヒトや犬猫含む多くの動物の子宮において、外子宮口はひとつです。

ウサギはは産仔数の多い、ネズミなどのげっ歯類と同じ構造で、繁殖能力の高さがうかがえます。

特徴

うさぎさんは自然界での寿命は約2-3年

その間に天敵に襲われたり、なわばり争い、ケガや事故などで亡くなってしまいます。

野生にはシニアウサギなんてほとんどいないでしょう。

野生のウサギさんは短い寿命の中で、子宮をフル活用しています。1年で約17-30匹ほどの子を産みます。

交尾排卵動物(交尾の刺激で排卵。安全日などなし。)のため、妊娠期間は約30日。年間3-5回の出産が可能。1回に平均5.8匹生まれます。

ウサギは自然界では被捕食者として、短い寿命で大量の子供たちを残す生活スタイルをとっている子たちです。

そのため、体の健康の保証も3~4年ほど。子宮の健康の寿命も短いと言えます。

そのためか、ヒトと暮らすウサギさんで、避妊手術をしていない子たちはは5歳になるくらいには大体の子が子宮に何らかのトラブルを抱えています。

その中で一番多く、最も恐ろしいのが子宮のがんです。

うさぎの寿命は人間と一緒に暮らすと7年くらいといわれています。長ければ10歳くらい生きるご長寿さんもよく見かけるようになりました。

もちろん自然に任せ、子宮の病気になってしまうというのも運命であるととらえることもできます。「子宮をとって長生きしてもらおう」、というのは人間のエゴなのか?

でも、せっかく人と暮らすもとに生まれたのなら、なるべく長い時間を健康に一緒に過ごしたいとも思います。

これはウサギと暮らすひと、一人一人がウサギの子宮のことを知ったうえで、どうしていくか決めていくポイントになります

以下で、子宮の病気について掘り下げます。

子宮疾患とは

子宮疾患といっても、複数あります。

その中でもうさぎさんは、”癌”が1番多いです。

どのくらいの子が子宮のがんになるのか?

子宮腫瘍の発生は長生きになるほど高くなる傾向があります。

たくさんの報告がありますが、3歳までに発生する子は4%くらい。

3歳から7歳まで、75%であった報告があります。

ほとんどといっていいでしょう。

よく見られる症状

もっとも多いのは血尿です。

ウサギさんには人や犬とは異なり、生理がありません。なので、尿に血が混じっている時点でおかしいです。

血尿から考えらえる子宮以外の病気には、尿路結石や膀胱炎などがあります。

子宮疾患の時は、子宮から出て膣にたまっている血液が、排尿の時に一緒に出てくることが多いです。

なので血尿も、全体的に赤いのではなく、黄色の尿の一部に赤色が付いていることが多め。

一般的には、癌は痛くありません。そのため、子宮の病気では元気さや食欲などに直接影響はないことがほとんど。

「元気いっぱいだから、子宮のがんなんてない!」とは言えないということです。

ただし、癌が肺に転移して呼吸がしんどくなる、骨に転移して痛みがある、ものすごい量の出血で貧血になるetc…などの場合はぐったりしたり、元気食欲がなくなってくるなどの症状が出てきます。

主な子宮疾患

たくさん子宮疾患の種類はありますが、その中でもおもな子宮の疾患について紹介します。

子宮内膜腺癌

ウサギさんの子宮の腫瘍ではこれが一番多く、危険な悪性腫瘍です。

大きくなるスピードはあまり早くないといわれていて、劇的に大きくなることはすくないですが、

転移は、大きなものであれば見つかることもありますが、小さいうちはなかなか見つけることはできません。

がんの摘出が遅れた子では、肺転移もよく見られます。

手術後も肺などほかのところに転移が見られてくる心配が残ります。

子宮内膜腺腫

これは先ほどの子宮内膜腺癌の良性腫瘍バージョンです。

良性腫瘍は基本的には転移をしたりはほとんどありません。しかしこれについてもこれから先、上記の悪性腫瘍、子宮内膜腺癌に転換する可能性もあります。

子宮内膜炎、子宮内膜過形成

これは腫瘍ではありません。

若いウサギさんでもなることがあります。

ホルモンの影響で子宮の内膜が増生して子宮全体が膨らむのが子宮内膜過形成です。

子宮内膜の血管も拡張し、出血しやすくなります。

また、一部で血管のこぶ(静脈瘤)ができることもあり、これが破裂すると大量出血が起こり、命にかかわることも。

子宮疾患に関連する病気

乳腺のトラブル

子宮の疾患があると、ホルモンの影響で乳腺が張ってきたりすることがあります。

乳腺の張りについては、避妊手術でとることで引いてくることが多いです。

しかし張るだけでなく、腫瘍になってしまうこともあります。

うさぎさんの乳腺の腫瘍は悪性のことも多いもの。

予防は早期の避妊手術です。

手術前の判別はできるの?

手術前の判別は困難です。

症状が血尿と子宮の腫大のため、これが癌なのか炎症なのか、はおなかを開けてとってみて、それをさらに病理の専門家に判断してもらわないとわかりません。

ただ、今は子宮内膜炎や子宮内膜過形成、子宮水腫など、がんではないものも、長い時間がたつといずれがんに変わることもあります。

検査

最も簡易的にできるのは尿の試験紙による検査

ここでは潜血反応をみていきます。

この検査では眼に見えない血(=潜血)も判定することができます。

ある程度年齢の進んだ女の子のウサギさんで、血尿が出ているのであれば子宮疾患を疑います。

病院の健康診断では避妊手術をしていないウサギさんの下腹部をしっかり触診します。小さなものはわかりませんが、ある程度の大きさがあると下腹部にしこりが触れます。

それが本当に子宮なのかどうかはレントゲンやエコー検査でだいたい把握します。

レントゲンでは下腹部あたりに石灰沈着が起こっているのが見られることも。この場合は特に悪性の腫瘍であることが多いです。

治療

子宮卵巣を手術でとる、避妊手術を行うことです。

ただ、もしすでに子宮の腫瘍が転移している場合については避妊手術をしても、完治は目指せません。

上記に関しては病院でご相談を

予防

ここまで子宮疾患の恐ろしさを中心に説明してきましたが、これらは避妊手術(;子宮と卵巣を摘出する手術)を行えば安心できるということです。

時期としてはある程度子宮が成長した8ヵ月以降を推奨しています。(病院によるので、もっと小さいうちでも大丈夫というところもあります)

手術を迷っている方にこそ知ってほしい。避妊手術についてはこちらを参照⤵︎

子宮疾患になってからやろうと思っている方へ

大体の病院では、病気のある子宮の手術は、予防的な避妊手術よりも高額になります。

出血の程度によっては、緊急手術になり、命に関わるリスクもぐっと高くなります。

まとめ

ウサギの子宮疾患はがんが多いことについて説明しました。

子宮疾患と一口に言っても、種類は様々。しかしその中でも特にがんが多いです。

予防についてどうしていくかは一緒に暮らすご家族全体で決めていくこと。

ただ後悔のないように。もし子宮を残すのであれば、どんな未来になっても受け入れる覚悟を。

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この記事を書いた人

たけちよのアバター たけちよ うさぎ系獣医師

〇エキゾチック専門獣医

うさぎの道をおしえてくれたのは歴代うさぎの白雪。今は3匹のうさぎたち(もふ、ゆきひめ、ちゃちゃまる)と暮らしています。
「うさぎの知識や経験を生かして、幸せなうさぎライフを応援する」ことをVisionに日々生きている、うさぎオタクです。
兎年に生まれ、兎年に獣医師になりました

自分たちより先に旅立つ小さなモフモフに、最期のときにはありがとうって言える付き合い方を、うさ飼い全員で目指したい。

飼い主さんのお話を聞くのが大好きです!ちょっとした疑問や気が付いたことなど遠慮せずどうぞ。

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