今日はウサギの避妊手術のメリットデメリットについてです。
ひと昔前と比べ、今はしっかりウサギさんについて飼育本などで学んでいる方が多いため、女の子ウサギの避妊手術は一般的になってきました。
前回、男の子の去勢手術では行動面の目的が大きいとお伝えしました。しかし女の子の避妊手術については、子宮疾患の予防目的が大半でしょう。
男の子の去勢手術についてはこちら↓
でも、診察をしているとなかなか健康な子にメスを入れるのはちょっと、、、など手術に踏み切れない方も多くいらっしゃるようです。
おっしゃるとおり、リスクもあります。
なかなか決断ができず、どうしようか、ともやもやする気持ちが少しでもすっきりして手術するのか、しないのか決断の一助になるように、避妊手術のメリットデメリットなどをお伝えします。
Contents
メリット
子宮のがんの予防になる
若い時に避妊手術をする理由のほとんどはこれだと思います。
事実、ある程度の年齢のウサギの子宮はほとんどといっていいほど病気にかかります。
だいたい3ー4歳くらいからちらほら見られはじめ、7ー8歳になるころには8割以上は子宮疾患になっている印象です。
そういった情報は飼育本などで見かける機会もあるかもしれません。
子宮の病気のほとんどが、うさぎさんの場合は子宮腺癌といわれる、悪性の腫瘍です。
この病気の怖いところは、ある日突然とんでもない量の血尿がでることや、肺に転移などを起こし呼吸がしにくくなってしまうことなど。
とにかく恐ろしいです。
わたしは個人的には、あの時手術していれば、、、、という飼い主さんの涙を見たくありません。なので避妊手術には大賛成ポジションです。
乳腺腫瘍の予防
ウサギさんは子宮疾患と関連して、乳腺の腫瘍ができることがあります。
こちらも子宮ほどではないですが、悪性の腫瘍であることが多め。
腫瘍ではなくても、子宮疾患により乳腺が張っていることも。
これは手術でとったりしなくても、避妊手術の後におさまってきます。
攻撃性が低下する
ホルモンによる気性の粗さがなくなることがあります。
実際、避妊手術をしていない高齢ウサギさんは怒りんぼ率が高め。
ブーって言ったり、パンチしてきたり。
それも,かわいいんだけど…
マウンティングがなくなる
男の子の発情行動にマウンティングがあります(通称カクカク)
マウンティング(通称カクカク)は男の子だけがするものではありません。
割合は少ないですが、女の子もすることがあります。
性ホルモンがかかわっていますので、手術後に軽減するでしょう。
偽妊娠がなくなる
(これをメリットに上がるかどうかも迷いました。)
女の子のうさぎさんが発情すると、せっせと自分の胸元の毛を抜いたり、草をくわえたりして、赤ちゃんを産むための巣を作ります。
お腹の中に赤ちゃんがいると思っている行動ですが、これも避妊手術をおこなうことでなくなってきます。
注意点
行動面の改善はマイルドな変化です
手術をしたからといってそのあとからすぐに行動が変化するわけではありません。
印象としては2~3ヵ月くらいかけて、徐々に変わっていくような感じで、いつの間にか変わっています。
しかし、その行動を本人が長く続けていることで、習慣化している場合はなかなか改善しないことも多々あります。
デメリット
太りやすい
避妊手術をした子は、食に目覚めるというか、脂肪がつきやすくなるか、その両方かで、太りやすいです。
手術前はちょっと多い食事をしていても体型を維持できていても、避妊手術をすると如実に体型表れてくるので注意が必要です。
ウサギの体格は少しずつの変化だとなかなか太っていることにも気が付きにくいので、家で体重をはかるか、病院で見てもらってください。
特に、「うちの子、小顔だわ」と思った時には注意です。
食事関連の記事はこちらも参考にどうぞ。
換毛がダラダラ続く
基本的にウサギさんは春と秋の大換毛、夏と冬の換毛の合計4回ほどです。個体差はありますが、、、
被毛の生え変わりについては、ホルモンがかかわってきます。
そのため避妊手術をした子では換毛になかなか終わりがない。一気に抜けることもありませんが、換毛がひと段落することなく、ずっとだらだら抜け続けていることが多い印象です。
なので一気に抜けて一気に毛づくろいをすることがなくなることは利点ですが、通年のブラッシングが必要となってきます。どちらがいいのかは微妙ですね、プラスにとらえましょう。
(もちろん個体差はありますよ…!)
毛色・毛質が変わることもある
女性ホルモンは被毛に強くかかわってくるので、避妊手術のあとで影響を受けやすいです。
手術前は真っ赤なきれいなレッキスさんが、手術後しばらくして避妊手術で赤みがなくなった茶色いウサギさんになってしまったことがあります。すこし残念でした。
しかし健康には変えられませんね
実際の避妊手術について
流れ
動物病院に行ったことがない方に向けて、どういった流れで避妊手術となるのか、そして実際どう避妊手術を行うかの一部始終を紹介します。
病院へ相談へ
避妊手術を考えるのなら、まずは病院は健康診断のついでに相談に行ってみましょう。
おでかけに慣らしていくのも箱入り娘にしない、大事なことです。
避妊手術を行う時期としては少なくとも8ヶ月以降がおすすめです。
最短は本当は6ヵ月くらいなのですが、あまりに早くするメリットはあまりないのと、手術で子宮が見つけにくいため手術時間が少し長くなるかもしれません。小さなウサギさんに怖い想いをさせると、今後の関係性に少し影響が及ぶことも。そのためあまりにも早い手術はお勧めではありません。
おすすめの時期は1歳前後。
1歳超えだと子宮がある程度のサイズになるので、手術の時にすぐに見つかるのです。
あまりに遅くなると、すでに病気になっているかも。
本人の体調が万全なときに。もし考慮できるのなら、真夏や真冬は避けるのがいいと思います。
費用
だいたい6-8万円くらいが目安です。病院によって差があります。
値段と安全性はほとんどの場合全く関係ありません。
手術前の準備
手術は全身麻酔をかけて行います。そのため麻酔をかけて問題ないかを確認する術前検査で、あらかじめ血液検査とレントゲンを行っておくことをお勧めしています。
血液検査では麻酔薬の排出にかかわる肝臓や腎臓などに問題がないか、
レントゲンでは麻酔中の呼吸や循環にかかわる肺や心臓に問題がないかを主に確認していきます。
手術の当日
まずは麻酔です。
犬猫では手術当日にご飯を食べないようにすることもあるようですが、ウサギではその必要はありません。
来院まではしっかり食べてきて問題ないです。(病院の指示に従いましょう。)
私の病院では、朝にあずかって昼に手術です。来院までは特に制限せずいつも通り食べてきてもらって、手術までの時間はご飯を抜いています。
以下は病院ごとに異なるので、たけちよの病院の場合です。
まずは筋肉注射で鎮静をかけます。
鎮静といっても、寝ていて大きな刺激がない限り反応しないので見た目は全身麻酔と変わりません。
皮下の点滴で、あらかじめ止血剤や痛み止めなどを注射します。
しっかり鎮静が効いたら、血中酸素濃度や心電図などをみて麻酔が安定しているかを確認しながら、ガス麻酔で全身麻酔をかけていき、手術で切るところの毛刈りを行っていきます。
全身麻酔をかけることで、皮膚を切る痛みや、子宮を引っ張る際の強い刺激に対しても反応せず安全に手術を行うことができるようになります。
省略しましたが、気管挿管や留置も取り、呼吸を管理して手術中は静脈点滴を流しています。
麻酔が安定していることが確認出来たら、いよいよ手術です。
~手術~ おへその下あたりの皮膚を2-3㎝ほど切って、腹壁を切って開腹します。子宮を探し出し、左右の卵巣ごと子宮とつながっている膜を切っていきます。子宮の膣のところで切り、子宮卵巣を摘出します。出血がないことを確認し、腹壁、皮下と皮膚を縫って完了です。
手術の時間自体は大体20分もかからないくらいです。
去勢手術と比較すると、避妊手術はおなかを開けるため、本人の負担は少し大きいです。
手術後の生活
傷を気にしてしまう子がいるので、抜糸(10‐14日後くらい)までの間は、エリザベスカラーを付けて生活してもらいます。
また、抗生物質、痛み止め、止血剤、お腹を動かす薬(食欲を戻す)の入った薬を1週間ほど自宅で飲みます。
たいていの子は術後すぐは元気さや食欲が落ちます。
1‐2日で半分くらい食べるまで回復していれば問題なく、次第に普段通りに戻ってきます。
しかし、全然食べない、またはどんどん体調が落ちるのであれば一度病院へ。
10日ほどたって抜糸(皮膚を縫った糸をとる。無麻酔です〇)が終われば、ひととおり完了になります。
手術のリスクーどれくらいの子が亡くなる?
どんな手術にも必ずリスクはあります。それはいくら健康であっても、です
お腹を開けるため、男の子の去勢手術よりは本人の負担は大きくなります。
女の子の手術にかかるリスクはいかほどなのか。
今の病院(エキゾ専門でうさぎが1番多い)で1年半ほど勤務していますが、今のところ健康な子の予防的な避妊手術で亡くなった子は見たことがありません。
ちなみにウサギの手術の中ではおそらく1番多い手術で、ウサギになれた獣医師にとっては難しい手術ではないです。
まとめ
リスクの伴う手術ですから、しっかりとそこから得られるメリット、デメリットについては理解しておきましょう。
また、ご家族としっかり相談のうえ、決断してください。
最期に、なかなかこういったネットの情報記事だけでは伝えきれない部分も多くあるので、不安を抱えながら迷っているくらいなら病院へ行きましょう。
飼い主さんの決断が一番大切なので、病院へ行ったからと言って手術を絶対にしないといけないということはないので安心してください。
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