ウサギの「偽妊娠」のしくみと対応

女の子のウサギさんはたまに「偽妊娠」と呼ばれる行動を起こします。

初めて見る方は、うちの子のいつもと変わった様子に驚かれるかもしれません。

今日はそんな、うさぎさんの偽妊娠について深く理解できるような記事を書きました。

目次

ウサギの偽妊娠とは?

妊娠をしていないのに、まるで妊娠しているかのような行動をとることです。

不妊手術をしていないウサギさんで見られることがあります。

偽妊娠中の体の中で起こっていること

ウサギの繁殖について

まずはウサギの繁殖についてです。

ウサギさんは交尾排卵動物です。(誘導排卵ともいう)

例えば人間では生理の周期があって、排卵日が月に一回ほどと、排卵が定期的に来るスタイルです。

しかし、ウサギは人とは異なり、交尾やそれに似た刺激があると排卵するという、圧倒的に効率のいい繁殖スタイルをとっています。

これが交尾排卵。

ウサギは交尾の刺激があると、平均10時間後に排卵を起こします。

偽妊娠のしくみ

偽妊娠は、ウサギさんの体の中で排卵が起こった状態です。

排卵が起き、卵巣にはプロゲステロンというホルモンを分泌する黄体が形成されます。

この黄体から放出されるプロゲステロンによって、ウサギさんの本能的な行動が起こります

妊娠はしていないのに、妊娠をしているときと同じ行動をとるため偽妊娠と呼ばれます。

~プロゲステロンとは~ プロゲステロンは排卵直後から分泌量が増える、妊娠の準備のためのホルモンとも言えます。基礎体温を上げ、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を安定させ、乳腺を発達させる働きもあります。
妊娠が成立しなければ、次第にプロゲステロンは減り始めます。

偽妊娠を引き起こすきっかけ

上記より、交尾らしき刺激が偽妊娠の引き金になります。

具体的には以下の通り

  • 背中を撫でられる
  • 雄ウサギの存在
  • マウンティングされる(同性ウサギによる順位付け行動でも)
  • 発情

偽妊娠でよくみられる行動

   以下、偽妊娠でよくみられる行動です。

  • 牧草をたくさん口に咥えている
  • 胸やおなかの毛を無心に抜く
  • 巣を作る
  • 乳汁が出る
  • いつもより攻撃的になる

この時のウサギさんはホルモンの影響で、赤ちゃんが生まれてくるための準備行動をとるようになります。

せっせと牧草を運んだり、無心で自分の毛を引き抜いて咥えてうろうろしたりと、安全な場所を探しています。

そしてあかちゃんを産むための巣を作り、次第に乳腺も張ってきます。

偽妊娠でも乳汁の分泌が見られることもあります。

この時のウサギさんはいつもよりイライラしていたり、巣に近づくと怒るかもしれません。

偽妊娠の時ウサギさんが考えていること

一生懸命なウサギさんの姿を見ると、「生まれてくる赤ちゃんのためを思って頑張ってるのに、生まれてこないと悲しいのかな?」と思ってしまう方もいるかもしれません。

赤ちゃんを産んだことがないウサギさんの偽妊娠の行動は、ホルモンによって本能的に起こっている行動です。

ウサギは子供が欲しくて巣を作っているわけではないということです。

本能の欲求に従った行動の結果を、ウサギたちは知りません。

ウサギは「子供ができることを期待して~」でなく、「ただ巣を作りたいから作る」のです。

本物の妊娠であれば、この本能的な巣作りの行動ののちに、子供ができて初めて子供を育てる、守るという次なる本能的な行動が出てくるんです。

偽妊娠が起こったら

ホルモン的な影響によるところが大きいため、自然に収まるのを待つことくらいしかできません。

巣作りをしている子は、作り途中で片付けられてしまうと、また最初から作ることになります。

さらに毛を抜いてしまいます。

そのため、本人の巣作りがひと段落して、完成していそうな時に取り除きましょう

もちろん本人の見ていないところで。

治療

 偽妊娠そのものに関する治療は不要です。

ホルモン剤によって治療をした報告もあるようですが、必要ないでしょう。

偽妊娠はもはや生理的なものです。

偽妊娠の場合は、本物の妊娠とは異なり、と2週間ちょっとで自然と収まることがほとんどです。

そっと見守りましょう。

また、偽妊娠は卵巣にかかわる状態なので、避妊手術をすると収まります

避妊手術は、偽妊娠予防を目的としている方はほとんどいないと思います。子宮がん予防がメインになります。

ちなみに女の子のウサギさんは避妊手術をすることが最近ではかなり一般的です。

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最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

たけちよのアバター たけちよ うさぎ系獣医師

〇エキゾチック専門獣医

うさぎの道をおしえてくれたのは歴代うさぎの白雪。今は3匹のうさぎたち(もふ、ゆきひめ、ちゃちゃまる)と暮らしています。
「うさぎの知識や経験を生かして、幸せなうさぎライフを応援する」ことをVisionに日々生きている、うさぎオタクです。
兎年に生まれ、兎年に獣医師になりました

自分たちより先に旅立つ小さなモフモフに、最期のときにはありがとうって言える付き合い方を、うさ飼い全員で目指したい。

飼い主さんのお話を聞くのが大好きです!ちょっとした疑問や気が付いたことなど遠慮せずどうぞ。

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